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国産コロナ治療薬「ゾコーバ」需要は未知数 前田雄樹
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新型コロナウイルス感染症に対する「国産」の飲み薬が、ようやく実用化にこぎつけた。厚生労働省は11月22日、塩野義製薬が開発した抗ウイルス薬「ゾコーバ」を緊急承認。抗ウイルス薬としては初の国産の飲み薬だ。
ゾコーバは、ウイルスが体内で増殖するのに必要な酵素「3CLプロテアーゼ」の働きを阻害することでウイルスの増殖を抑える作用を持つ。日本を中心に軽症・中等症の患者1821人を対象に行った最終治験では、発症から72時間以内にゾコーバを1日1回5日間服用したグループは、偽薬(プラセボ)を飲んだグループに比べ、オミクロン株に特徴的な五つの症状(鼻水・鼻づまり、喉の痛み、せき、発熱、倦怠(けんたい)感)が改善するまでの時間が約1日短縮。投与4日目の時点で体内のウイルス量も偽薬に比べて30分の1程度に減少した。
ゾコーバの最大の特徴は、軽症・中等症の患者に重症化リスクの有無を問わず投与できる点だ。軽症・中等症患者向けの経口抗ウイルス薬としてはすでに「ラゲブリオ」(米メルク)と「パキロビッド」(同ファイザー)が承認されているが、いずれも重症化リスクのある患者が対象とされている。一方、▽胎児に影響があるため妊婦や妊娠の可能性がある女性は服用できない▽併用できない薬や併用に注意を要する薬が多い▽発症後早期に服用を開始する必要がある、といった点には注意が必要だ。
100万人分購入
国内の新規感染者数は11月15日に約2カ月ぶりに10万人を超え、その後も緩やかではあるが増加傾向が続いている。
こうした状況で緊急承認されたゾコーバだが、その意義をめぐっては賛否が分かれている。緊急承認の可否を議論した厚労省の審議会では、既存薬と異なり重症化リスクのない患者に投与できる点や国産で安定供給が見込める点を評価…
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週刊エコノミスト
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