マーケット・金融

ゼロゼロ融資不正は「中日信金だけ?」 検証には及び腰の業界 三好悠

「ゼロゼロ融資」の申請書類。手書きの売り上げメモでも資料として認められた
「ゼロゼロ融資」の申請書類。手書きの売り上げメモでも資料として認められた

 新型コロナウイルス対策として導入された「ゼロゼロ融資」の不正は、内部告発が発覚の端緒だった模様だ。

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 新型コロナウイルス対策として導入された実質無担保・無利子の「ゼロゼロ融資」を巡り、中日信用金庫(愛知県)は2022年7月、職員が企業の売り上げを改ざんして申請し、不正な貸し付けを行っていたと発表した。同年9月には東海財務局が中日信金に対して業務改善命令を出した。信金業界では「他の信金でも同様の不正が発覚するのでは」という疑心暗鬼が渦巻いている。

 中日信金の発表によれば、経営環境の急変によって売り上げが急減した事業者に対し別枠で保証を提供する「セーフティネット保証」などの申請で、売上高の減少率が基準を満たすよう売上高を書き換えていた。7店舗の11人が不正にかかわったという。ゼロゼロ融資の不正は79件で、14億7800万円を融資していた。ゼロゼロ融資全体の取扱件数3735件のうち、不正は2.1%を占めている。

 信金を含む地域金融機関では中日信金の発表後、ゼロゼロ融資をめぐる不正は今のところ明らかになっていない。しかし、「不正が全国で中日信金だけということはありえない」「金融庁から全国に一斉調査が入るのでは」などとうわさされている。中には、ゼロゼロ融資を取り扱ったすべての案件を、不正がないか再検証する地域金融機関もある模様だ。

 こうした疑念が渦巻く背景には、金融機関の実務者が抱く皮膚感覚がある。売上高の減少幅が条件に満たないといった理由で融資を断った後に、他の金融機関が融資を実行したことを知った時に抱く違和感だ。通常の信用保証協会保証付き融資の取扱件数に比べ、ゼロゼロ融資などの取扱件数が極端に伸びている金融機関に対しては、「無理をして貸したのでは?」とも思いたくなる。

改ざん容易な環境

 ゼロゼロ融資はコロナ禍の混乱を受け、融資判断にも迅速さが求…

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週刊エコノミスト

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