ポスト黒田で年内に長期金利1%程度 円高・株安も進む 武田淳
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金融政策の変更は、株価や為替からマクロ経済に影響が及ぶ。現時点で考えられる展開を想定した。
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黒田東彦総裁(4月8日に任期満了で退任)の下、10年間続けられた日銀の異次元緩和はどうなるのか。その行方を占うため、まずは直近2回の金融政策決定会合の内容を整理したい。昨年12月19~20日の決定会合は、日銀が長期金利(10年国債利回り)の目標水準こそ「ゼロ%程度」で据え置いたが、その変動幅を「プラス・マイナス0.5%程度」に拡大、結果的に0.5%程度までの上昇を許容した。
この措置について黒田総裁は、利上げではなく市場機能の改善、すなわち10年物金利だけが極端に低くゆがんだイールドカーブ(利回り曲線)を修正するためだと説明。同時に2年物、5年物、20年物国債の買い入れ増額や指し値オペ実施を決めた。つまり、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を強化することで、現行の量的緩和政策の枠組みを維持したわけである。ただ、金利上昇圧力が高まる中でイールドカーブの上方シフトを追認したことにもなるため、事実上の利上げと言われても仕方がないだろう。
今年1月17~18日の決定会合では、金利操作、資産買い入れ方針とも現状維持だった。改定された「展望リポート」が示す通り、依然として2%の物価上昇目標は2024年度中も達成せず、金融緩和が引き続き必要だとの判断に基づく。そして、国債などを担保に金融機関へ資金を貸し出す「共通担保資金供給オペ」の拡充を決めた。その狙いは、金融機関に日銀が望む利回りでの国債購入を促し、YCCの強化を図ることである。
これら2回の決定会合から日銀の姿勢を読み取ると、現行の量的緩和の枠組みであるYCCを維持しつつ金利上昇を抑えるため大量資金供給を続けるが、YCC維持のためならある程度の長期金利上昇を排除しない、ということではないか。そして、新総裁の最大の役割も、現行の枠組みを維持しながら出口戦略への地ならしを進めることとなろう。そうであれば、10年国債利回りが年内にも、現状で適正水準とされる1.0%程度へ上昇する可能性を念頭に入れておくべきである。
日経平均2000円下落も
仮に10年国債利回りが現状から0.5%上昇した場合、どのような影響があるのか。ドル・円相場は、日米金利差の縮小により現状に比べ円高に進むだろう。昨年10月以降、ドル・円相場と日米の5年国債利回り差との間に強い相関が見られ、その関係は利回り差0.1%に対して2.45円程度である。5年債利回りの変動を10年債の半分程度とすれば、日本の5年債が0.25%上昇し、ドル・円相場は6円強の円高となり、1ドル=120円台前半まで円高が進む計算になる(図1)。
金利の上昇は、株価への影響も大きい。株式を投資対象としてみた場合、配当割引モデルの考え方を当てはめると、…
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週刊エコノミスト
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