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ロシア、中国の経済侵食が加速 高口康太

ブランド名はロシアのものでも中身は中国車という例も Bloomberg
ブランド名はロシアのものでも中身は中国車という例も Bloomberg

 ロシア各地で日米欧企業が事業の縮小・撤退を決めるなか、中国企業がその空白を急速に埋めている。

>>特集「ウクライナ侵攻1年」はこちら

「中国事業者のショップ登録数は1万店を超え、販売商品の90%は中国製品。2022年第3四半期の売り上げは前年同期比300%を達成した」

“ロシアのアマゾン”と呼ばれる露EC(電子商取引)プラットフォームのOzon(オゾン)は昨年11月、中国の広東省深圳市にオフィスを開設した際、この驚くべき数字を発表した。

 オゾンによると、「スマートフォン、ノートパソコン、パソコン部品、そして家電やアパレル」が特に人気だという。安さだけではない。スマホのシャオミやファーウェイ、ロボット掃除機のニーツバーはブランドとしての人気も高い。

 深圳市は電子機器製造の中心地として知られるが、越境EC(国境を越えたネット販売)企業の集積地でもある。この地にオフィスを開設した背景には、ロシアのウクライナ侵攻で日米欧の企業が撤退するなか、代わりとして中国企業を誘致しようという狙いがある。オゾンは24年までに中国事業者の登録数、取引額を現在の10倍に拡大する計画だ。

スマホも中国製が独占

 ロシアの消費者に直接販売している中国越境ECモールが、アリババグループの「アリ・エキスプレス」だ。ロシアでは4大ECモールに数えられるほどの存在感を持つが、ウクライナ侵攻後はその地位をさらに盤石なものとした。制裁により、ロシアの銀行が発行したビザやマスターカードなど、国際ブランドのクレジットカードが利用できなくなったため、ロシアの消費者が海外の越境ECモールを利用することは困難になった。だが、ロシア現地の決済システムに対応しているアリ・エキスプレスならば従来通り使える。

 アリ・エキスプレス海外総責任者の劉威氏は、中国製品海外進出サミットの席上、物流ネットワークの整備などロシア市場への投資を強化すると発言。22年の「独身の日」(中国で毎年11月11日に開催されるセール)では、スマホ、工具、スポーツ用品、家具、ベビー用品、玩具が売れ筋商品になるとして、中国事業者に出店を促していた。

 実際、中国メーカーのスマホは大きくシェアを伸ばしている。ロシア紙『コメルサント』によると、ウクライナ侵攻前から出荷台数シェアでトップ(35%)だったシャオミは、昨夏の時点で42%にまでシェアを伸ばしている。2位には、アップルを抜きリアルミー(オッポのサブブランド)が入った。また、アフリカやインドなど途上国市場に強いテクノもシェア7・5%の4位につけた。アップル、サムスンが失ったシェアを中国勢が奪っている。

 アパレル…

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