空き家譲渡特例 所得税に大幅軽減効果 大塚政仁
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相続した空き家を売却すると、売却益にかかる所得税が大きく減る特例がある。
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政府が昨年12月に閣議決定した2023年度税制改正大綱で、「空き家譲渡特例」の適用期限を「4年延長する」ことが盛り込まれた。特例は23年末で終了する予定だが、27年末まで延長するという内容だ。関連法が3月に国会で成立し、4月1日に施行される予定になっている。特例を使うメリットについて、例を挙げて説明しよう。
埼玉県内の自宅で1人暮らしをしていた高齢男性のAさんは約2年前、亡くなった。Aさんの長男Bさんは千葉県、長女Cさんは神奈川県に住んでいる。埼玉の家を相続した2人はそこに転居するつもりはなく、売ることにした。結局、Aさんが亡くなってから約2年後、6000万円で売却できた。
Aさんが数十年前に埼玉の家とそれが建つ敷地を手に入れた時の取得費(原価)は300万円、今回売る時にかかった諸経費(譲渡費用)は200万円だった。すると、長男と長女の売却益は5500万円(6000万円−300万円−200万円)と計算できる。それにかかる所得税などの税率は20・315%だから、納税額は2人で1117万3200円(100円未満は切り捨て)となる。
かなりの金額だが、一定の条件を満たせば特例を適用でき、納税額がゼロになる。その計算式は以下の通りだ。
3000万円を控除
長男と長女の売却益5500万円は1人当たりにすると2750万円になる。特例を適用できる場合、それぞれの売却益から3000万円を控除する(差し引く)と売却益はゼロになる。つまり、長男と長女は売却益について特例を適用できたことで、1人当たり約558万円の税を負担せずに済んだことになる。
特例を適用できる条件のうち、主なものは以下の通りだ。
(1)BさんとCさんはAさんが住んでいた家屋を相続し、その3年後の年末までに1億円以下で売ったこと(適用期限は23年末まで。23年度税制改正が実現すれば27年末まで)
(2)Aさんが亡くなってから売るまでの間、誰かに貸したり、誰かが住んだりしていなかったこと(空き家だったこと)
(3)Aさん…
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週刊エコノミスト
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