法務・税務

“管理不全”空き家に厳しく 宅地の固定資産税軽減特例改正へ 米山秀隆

行政代執行で撤去作業が始まった三重県名張市の空き家(2023年1月)。空き家を放置すると多大なコストがかかる
行政代執行で撤去作業が始まった三重県名張市の空き家(2023年1月)。空き家を放置すると多大なコストがかかる

 荒れた空き家が発生する一因となっている税優遇が近く変わる。

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 空き家対策特別措置法(以下、空き家法)の改正を目指す国土交通省は1月31日、社会資本整備審議会の小委員会が取りまとめた「今後の空き家対策のあり方」の案を公表した。固定資産税の「住宅用地特例」を解除できる条件の緩和を盛り込んだものだ。国交省は3月上旬、この案を踏まえた空き家法改正案を国会に提出するとしている。

 住宅用地特例とは、「居住の用」に供する住宅が建っている敷地の固定資産税を軽減する措置である。住宅が建っている敷地にかかる税は、建っていない敷地の最大6分の1に軽減するという内容だ。住宅を持つ人の税負担を緩和する趣旨で、国が1973年度に設けた。しかし、たとえ人が住めないような劣悪な状態になったとしても税負担が軽減されるため、所有者が住宅を取り壊さずに放置するという弊害が生じていた。

 そこで、2015年施行の空き家法によって、市区町村は倒壊の恐れなどがある空き家を「特定空き家等」に認定し、所有者に対して助言・指導、勧告、命令、代執行の措置を取れるようになった。そして、特定空き家等の所有者が助言・指導に従わず、勧告を受けたまま1月1日を迎えると、住宅用地特例による税軽減の適用を受けられないことになった。空き家法に基づく措置と課税強化という二つのプレッシャーによって、所有者の適正管理や売却など早期流動化を促そうという狙いだった。

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 措置の効果は一定程度あったと考えられるが、これでも緩いという意見がある。所有する空き家が特定空き家等に認定されたとしても勧告を受けない限り、税負担が重くならないからである。つまり、勧告を受けない程度に管理していれば、税制上のペナルティーはないということになる。

京都、神戸で厳格適用

 一方、今回の取りまとめ案は、特定空き家等と認定されるレベルまで状態が悪化する前の段階で、住宅用地特例を解除できるようにすることを盛り込んだ。所有者へのプレッシャーを高め、より早期の対応を促そうというものである。

 今後の法改正によって、市区町村はこうした措置を取ることになる。ただ、そもそも住宅用地特例を厳格適用していれば、人が住めないような住宅が建つ敷地は対象外になるはずだった。この点は空き家法施行時の15年に総務省が出した通知で、「構造上住宅と認められない状態にある場合」「居住の用に供するための必要な管理を怠っている場合」などについて、特例を適用しないことを確認していた。

 それまで市区町村はそうした適用をしてこなかったわけで、本来、徴収すべき税金を…

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週刊エコノミスト

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