デジタル給与払い解禁が銀行を脅かしそうにない理由とは 谷口栄治
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4月から解禁された「デジタル給与払い」。キャッシュレスの拡大につながるのか。
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労働者への給与の支払いをデジタルマネーで行う「デジタル給与払い」が4月から解禁された。デジタル給与払いとは、給与を銀行口座ではなく、資金移動業者が管理する決済口座(〇〇ペイなど)に直接振り込む、つまりチャージすることを指す。
実は給与の支払いは、労働基準法により現金払いが原則と定められており、最も一般的な銀行口座への振り込みは「例外扱い」である。今回、給与払いに関する規制が緩和され、一定の条件の下、この例外扱いに「〇〇ペイ」といったデジタルマネーが追加されることになった。一定の条件とは、労働者との合意を前提とする▽決済口座の残高の上限を100万円とする▽月に1回は手数料なしで現金引き出しができるようにする──などである。
デジタル給与払いがもたらすメリットとして期待されるのが、キャッシュレス決済の促進である。2022年のわが国のキャッシュレス決済比率は36%で、計算方法の相違などを勘案する必要はあるが、諸外国と比較すれば見劣りする水準である。デジタル給与払いの解禁により、給与が直接キャッシュレス口座に入金されることで、キャッシュレス決済の頻度や利用額が増加すると見込まれる。
省けるチャージの手間
一方、デジタル給与払いの普及には課題も多い。そのひとつが、利用者にメリットが乏し…
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週刊エコノミスト
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