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マーケット・金融 逆風の銀行

海外から撤退する地銀 海外で稼ぐ地銀 高橋克英

金融センターのシンガポールに拠点を置いている地銀はなお多い Bloomberg
金融センターのシンガポールに拠点を置いている地銀はなお多い Bloomberg

 コスト負担の重さから閉鎖が相次ぐ地銀の海外拠点。一方で、貸し出しの拠点として機能を強化する動きもある。

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 地銀の海外拠点の閉鎖が相次いでいる。

 南都銀行は、2021年4月に香港駐在員事務所を、同年8月には上海駐在員事務所を相次いで閉鎖し、海外拠点がゼロとなった。みなと銀行、みちのく銀行、山梨中央銀行も閉鎖により、海外拠点はすでにゼロだ。

 業務提携行やグループ同士で、海外拠点の統廃合を進めるケースも増えている。地銀の広域連合「TSUBASA(つばさ)アライアンス」に所属する滋賀銀行と中国銀行は昨年1月、バンコク駐在員事務所を共同化した。みなと銀行は21年3月、上海駐在員事務所を閉鎖し、今後はりそなグループの海外ネットワークやノウハウを活用する。

 山梨中央銀行は21年8月、「静岡・山梨アライアンス」を組む静岡銀行の香港支店と重複する香港駐在員事務所を閉鎖している。新型コロナウイルス禍で、顧客の海外進出のニーズが減少し、現地視察でのアテンド(同行)も減る中、商談やセミナーをオンライン化したことも影響したという。

地政学リスクも影響

 地銀は、人口減少やネット銀行などの拡大により先行きが厳しい中、地元では経費削減のため、店舗やATMの統廃合を急ピッチで進め、生き残りをかけた地銀同士の統合再編にも踏み切っている。「国内店舗を統廃合している地銀が、なぜ赤字の海外拠点は維持するのか」という批判の声は地元だけでなく、行内や株主からも上がる。実際のところ、千葉銀行や伊予銀行の海外支店など一部を除けば、管理会計上も黒字である海外拠点はほとんどないとみられる。

 特に、支店よりも規模が小さい海外駐在員事務所は、現地の情報収集、取引先企業の海外進出サポートや商談会、現地視察のアテンドなどが中心であり、現地スタッフを含め、従業員が2人といった拠点も少なくない。スマートフォン経由であらゆる情報が瞬時に手に入り、ウェブでの会議も可能となったデジタル社会において、地銀が海外に情報収集拠点を持つ意味合いは大きく低下しているのだ。

 マイナス金利政策が16年にスタートし、地銀の経営の厳しさが増した17年以降、16地銀が計22もの拠点を閉鎖しており、地銀の主な海外拠点は、19支店、79事務所、9現地法人(コンサルティング会社など)にまで減少している(図、拡大はこちら)。ただ、これは裏を返せば、まだ100を超える海外拠点が展開されていることになり、この先も閉鎖や撤退が続くことになりそうだ。

 海外拠点を縮小する背景には、中国やロシアなどに関連した地政学リスクの影響も大きい。閉鎖された22拠点のうち、半数は中国に位置している。人件費高騰に加え、習近平政権下の「香港国家安全維持法」制定や、反スパイ法違反を理由に日本人ビジネスマンなどの相次ぐ拘束など、日本企業にとって経済活動をする上での環境が悪化している。

北国銀は国内基準行へ

 北海道銀行は、地銀唯一のロシア拠点である駐在員事務所を2カ所持ち、地元取引先のロシア進出支援や商談会などで成果も上げてきた。しかし、ロシアによるウクライナ…

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