もう悩まない! 空き家の処分・活用必勝法 井上幸一
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空き家をいたずらに所有し続けると、さまざまなコストやリスクが降りかかる。できるだけ早く処分や活用の方針を決めたい。
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空き家は所有するだけで多額のコストやさまざまなリスクを抱えることになる。そればかりでなく、地域に空き家が増えると、その地域の治安の悪化などを招き、ひいては地域全体の資産価値を下げたり、地方自治体の財政も圧迫したりする。幼いころに住んだ経験など、愛着のある家を処分するのは簡単ではないが、負の遺産を引き継いだり残したりしないように早めの対応を考えたい。
まず、空き家にはどのようなコストがかかるのか。代表的なコストに市町村税(東京23区は東京都税)の固定資産税・都市計画税がある。市町村によって異なるが、大半の自治体では土地・家屋の固定資産税評価額に対し、固定資産税は1.4%、都市計画税は0.3%がかかる。ただし、住宅用地なら固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1に軽減される特例(200平方メートル以下の場合)がある。
また、水道や電気は日々使わなくとも、契約しているだけで毎月、基本料金がかかる。失火などに備えるため、火災保険の保険料が必要になる。庭があるなら手入れも必要で、シルバー人材センターに草刈りを依頼する場合、地域によって料金は異なるが、2時間なら3500円程度がかかる。国土交通省の2019年の空き家所有者実態調査によれば、年間の維持費用は5万円以上~10万円未満が18.0%と最も多い(図1)。
不法投棄、賠償責任も
加えて、人が住まなくなった空き家は建物の傷みが早い。定期的に換気をしたりしないと、湿気や窓の結露、カビ・ダニなどが発生し、異臭の原因にもなる。ひどい場合にはシロアリの被害に遭って建物の構造にも影響を及ぼしたり、雨漏りによって屋根や柱が腐ってしまったりすることもある。空き家管理のサービスもあるが、月1回の巡回で1万円程度の費用がかかるサービスが多い。
建物が劣化するとその分、資産価値も下がるため、修繕の費用も必要になる。人が住めない状態となった空き家は、なかなか買い手も見つからない。また、空き家の状態が長く続くと、ゴミの不法投棄の対象となったり、第三者が不法に占拠したりする可能性が高まる。建物の倒壊などで隣地の所有者や通行人に危害を与えれば、損害賠償の責任を負う。近隣住民との関係も悪化する。
地域の空き家率が30%を超えると急速にスラム化などが進行し、自治体の財政も破綻するといわれる。空き家の課題解決に向け、今年6月成立の改正空き家対策特措法では、倒壊の危険性などが高い「特定空き家」に加え、放置すれば特定空き家となる恐れのある「管理不全空き家」も住宅用地の特例が解除され、固定資産税なら6倍になることになった。空き家の所有に伴うコストは今後、さらに膨らむことになる。
「持ち続ける」と「手放す」
相続などで空き家を所有することになった場合、できるだけ早く今後の方針を決める必要がある。その時、選択肢となるのは、「持ち続ける」か「手放す」かの二つだ。ここで、判断基準となるのは、「将来使う予定があるかどうか」になる。空き家を将来使う予定がなければ、たとえ安くしか売れなかったとしても、空き家所有に伴うコストを考えれば手放したほうがいい。
「持ち続ける」にしても「手放す」にしても、空き家の状態はその後の処分に大きく影響する。重要なのは、「人が住めるかどうか」であり、しっかり手入れされてすぐにでも人が住める状態であれば、賃貸でも売却でもメドを付けやすい。木造住宅であれば流通可能かどうかを判断する際、シルバー人材センター会員専用の資格に「木造住宅簡易鑑定士」があり、依頼すれば現地調査のうえ、簡易鑑定書を発行してもらえる。
空き家を持ち続けることにした場合、①自分・身内が住む、②管理する、③賃貸する、④活用する──の大きく四つの方法がある。①の自分や身内の誰かが住むことになるなら問題は生じない。②の管理では、管理のコストはかかるものの、「二地域居住」という方法がある。普段は大都市に住みながら、週末など一定期間は地方で過ごすライフスタイルで、近年は二地域居住をしたいと考える人も増えている。
増える「贈与型賃貸借」
③の賃貸では、今すぐに人が住める状態であれば問題ないが、そうでない場合は住める状態にするまでリフォーム費用がいくらかかるかがポイントになる。自分が住んだり活用したりする場合は民間金融機関の住宅ローンも利用できるが、賃貸の場合は金利が若干高くなる傾向があるため、金利水準は確かめたい。また、リフォーム費用も人件費や物価高騰によりここ数年で大きく上昇している。
最低限、人が住める状態の家であれば、「DIY型賃貸借」という手法もある。自分好みに家を改修したいというニーズに応え、借り主が自分の費用で家を改修できる賃貸の形式で、国土交通省も賃貸住宅の流通促進策の一環として普及に取り組んでいる。貸主にとってもリフォーム費用を抑制できるというメリットがある。国交省…
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