“本気”の法改正で空き家対策は新ステージへ 米山秀隆
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空き家を放置し続ければ、行政からの指導などを受ける可能性がより高まった。改正された空き家対策特別措置法の内容を専門家が解説する。
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改正空き家対策特別措置法が今年6月、参院で可決・成立し、6カ月以内に施行されることになった。空き家を放置すれば、その空き家だけでなく地域全体にも深刻な悪影響を及ぼす。今回の改正法の成立により、空き家の管理、取り壊し(除却)、活用のすべてにわたって、空き家の所有者だけでなく市区町村にとっても、これまでより積極的な対応が求められることになる。
2015年に施行された空き家対策特措法では、所有者の責務として適切な管理の努力がうたわれ、①倒壊など著しく危険となる恐れ、②著しく衛生上有害となる恐れ、③著しく景観を損なっている、④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切──の四つの状態の空き家を「特定空き家」と認定し、状態を改善するための指導、勧告、命令、代執行の手立てが整えられた。
空き家対策特措法により、特定空き家の取り壊しが進むなど一定の成果はあったと考えられる。また、空き家活用促進のため、空き家の売却・賃貸希望の情報を提供する「空き家バンク」を設置した市区町村は8割を超えた。しかし、これまでの対応は危険なものがあれば取り壊し、使える可能性のあるものは流通を手助けするといった、最低限の個別対応にとどまっていたとも考えられる。
今回の改正では、所有者の責務として、国・自治体の施策に協力する努力義務が追加されるとともに、特定空き家に至る前の段階である、「管理不全空き家」というカテゴリーが設けられ、より早期の対応が可能となった。また、市区町村は「空き家等活用促進区域」という、空き家を重点的に活用するエリアを定めることによって、規制面でそのエリアの空き家を活用しやすくしたりもした。
NPO、民間も活用
さらには、空き家の活用や管理に取り組むNPOや民間企業などを「空き家等管理活用支援法人」として指定し、市区町村のマンパワーや専門知識を補完する存在として活用できるようになった。市区町村は従来、状態がかなり悪化した空き家に個別対応するのが精いっぱいだったとすれば、改正後はその前の段階から対処したり、地域全体としての施策を講じたりしやすくなり、空き家対策は新たなステージに入るといってもよい。
管理不全空き家という新たなカテゴリーが設けられる背景には、空き家の一層の増加が見込まれる中では、周囲に著しい悪影響を及ぼす特定空き家になることを待つことなく、早期に適切な管理を促すことが重要との考えがある。具体的には、市区町村長が放置すれば特定空き家になる恐れのある管理不全空き家に対し、まずは管理指針に即した措置を指導する。
この管理指針は、今後国が告示する。指導しても状態が改善し…
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週刊エコノミスト
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