インタビュー「マンション建て替えは新築市況に左右される面も」重水丈人・旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所長
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マンション建て替えで国内トップの実績を持つ旭化成不動産レジデンス。建て替え問題の専門家で同社マンション建替え研究所長の重水丈人さんに高経年マンション再生の現状を聞いた。(聞き手=浜田健太郎・編集部)
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── 築40年を超える高経年マンションのうち、1981年5月までに適用されていた旧耐震基準のものが全国で約103万戸。これを新基準に合うように改修したり、もしくは建て替えたりするニーズはどのくらいあるのか。
■耐震改修は物理的な制約によりできない場合がある。例えば、建物の外側に補強フレーム(柱・梁(はり))を組むためには、建物と隣地境界との間に隙間(すきま)が必要だが、境界ぎりぎりまで建てているマンションは補強を組むスペースがなく改修できない。揺れに耐えるための壁を入れる場合でも、マンションの構造によっては、壁を入れることができないケースがある。そうした物件は、建て替えるよりほかは、耐震性能を回復する方法がない。
建て替えが物理的にできない物件はない。問題は資金負担ができるか否か、区分所有者が資金負担に納得する建て替えができるかどうかだろう。
ペースは「ゆっくり」
── 国土交通省によると、マンションの建て替え実績は昨年4月時点で、全国で累計270件。旧耐震のマンション戸数が103万戸あるので、建て替えは非常に少ない印象だ。
■そもそも建て替えは非常に難しい。区分所有者が50人いれば、よほど条件が整わない限り、建て替えに全員の合意が得られることはない。旧耐震のマンションは棟数で直すと1万棟強くらいだと思うが、国交省によるとマンション建て替え実績は年間7棟(22年度)、9棟(21年度)、10棟(20年度)と、非常にゆっくりとしたペースで推移している。
── 旭化成不動産レジデンスが参画したマンション建て替えは47件(23年7月末時点)で国内トップ(注)。超一等地で、建て替えによって完成後の物件に高い市場価格が付くことを見越して、区分所有者に再取得のためのつなぎのローンを銀行が出したと想像するが。
■東京の都心部では高い価値が…
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週刊エコノミスト
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