増える第三者管理のマンション 根深い“利益相反” 香川希理
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誰もが敬遠しがちなマンション管理組合の理事会業務。管理会社が引き受けてくれるのならありがたい──。しかし、事はそう単純ではない。
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マンション管理の方式として近年、管理会社が管理組合の理事長(管理者)を兼ねる「第三者管理方式」が急激に増加している。国土交通省の資料によると、2022年時点で管理業務を「受託している」「今後受託を検討している」と回答した管理会社は159社となっており、20年と比べて約3割も増加している(図1)。急増の背景やメリット、リスクとしてどのようなものがあるのかを解説する。
そもそも区分所有法では、区分所有者全員によって団体(管理組合)を構成し、少なくとも年1回開く集会(管理組合の総会)で管理規約の変更などの意思決定をする。この管理組合を代表する立場が区分所有法上の「管理者」であり、区分所有者を代理して契約を締結したり、管理の責任を負ったりする。管理規約でこの管理者を「理事長」としたり、管理組合の執行機関として「理事会」を置くことを定めたりするマンションが多い。
一般的な管理組合では通常、管理者としての理事長や理事会の役員を区分所有者から選任するが、外部の第三者に管理者や役員を委託するのが第三者管理方式である。第三者管理方式にもさまざまな種類があり、管理者ではなく役員を委託するパターンや、管理者を監督する組織として理事会は残したまま管理者を委託するパターンもあるが、最も多いのが理事会を置かずに管理者を委託するパターンである。
役員の担い手が不足していたリゾートマンションやワンルームマンションでは、以前から第三者管理方式の導入例が散見されたが、ここ数年はファミリータイプで急増している。その主な背景には、建物の老朽化と区分所有者の高齢化という“二つの老い”の問題に加えて、空室や賃貸住戸などの非居住化の進行もある。ファミリータイプでも「役員の担い手不足」が深刻となり、その対策として今、管理会社が管理者となるパターンの第三者管理方式が増加している。
管理会社にも「メリット」
高級マンションでは、別の背景から新築分譲時から第三者管理方式を導入している事例も増えている。主たる購入層である高所得者層やパワーカップルなどには、多忙な仕事や子育てといった理由から、管理組合役員になる時間を取れない(取りたくない)というニーズがある。そのニーズを満たすため、第三者管理方式による「役員業務からの解放」を売りにしているのである。
一方、管理会社側から見れば、「理事会支援業務からの解放」が大きなメリットである。管理会社の多くは管理業務の一環として、理事会の事務作業や資料収集などの理事会支援業務を手掛けており、土日や夜間に開催されることの多い理事会に従業員を出席させている。管理会社自体が管理者になる第三者管理方式であれば、従業員を土日や夜間に働かせずに済む。
また、管理会社において昨今、重要な課題になっているカスタマーハラスメント(カスハラ)問題に関しても、第三者管理方式はメリットがある。管理会社は理事…
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週刊エコノミスト
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