マンション大規模修繕でよくあるトラブル&対処法 桑田英隆
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マンションにとって大規模修繕は大掛かりな一大プロジェクト。それだけに、トラブルに見舞われることも少なくない。事例と対処法を紹介する。
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マンションの大規模修繕工事は、12~15年に1回程度、マンション全体または複数の箇所について行われる。屋上の防水、外壁の塗装やタイルの貼り替え、配管の更新などである。ところが、マンションの中には、大規模修繕を行わないまま放置されたものも少なくない。筆者の経験では、特に管理会社のいない自主管理の小規模なマンションなどで見られた。
大規模修繕が行われないと、屋上から雨水が漏れ出したり、外壁からタイルが剥がれて通行人をケガさせたりするなど、さまざまなトラブルが発生する。資産価値も下落し、住民間の雰囲気も悪化しかねない。筆者も、長年修繕が行われないまま、設備が老朽化したために起こった水漏れの相談を受けたことがあるが、たまたまその時期に理事になった住民は問題解決にとても苦労することになる。
そのため、大規模修繕はマンションにとって、非常に大切なメンテナンスになる。しかし、大規模修繕の実施に際しても、さまざまなトラブルが発生し、簡単には解決しない。どのようなトラブルが起きうるのか、その対処法とともに紹介したい。
トラブル1 悪質なコンサルタント! マンションの大規模修繕には、①建物診断、②工事の設計、③実際の工事──という段階がある。とはいえ、住民に修繕の専門知識があることは少なく、建築の専門家が関与するのが普通だ。この場合、診断から工事まで施工会社や管理会社に一任してしまう方法や、診断、設計、工事の監理などは設計事務所といったコンサルタントに依頼し、工事は施工業者に依頼する設計監理方式などがある。 設計監理方式は、中立な立場のコンサルタントが透明性をもって施工業者の選定をサポートする利点があるとされ、多くのマンションの管理組合が設計監理方式を採用している。ところが、実は施工業者の従業員に診断や設計をさせていたり、バックマージンを支払う業者に発注するよう誘導したりするコンサルタントがいるという悪質な問題が、2017年ごろから表面化した。 国土交通省も同年、マンション管理の業界団体などに対し、管理組合への注意喚起と相談窓口の周知を呼びかける通知を出したほどだ。もちろん、コンサルタントと契約した後に、契約違反や不正が発覚した場合には、契約を解約したり損害賠償を請求したりすることができないわけではない。しかし、実際にコンサルタントが行った不正を、後日明らかにすることは簡単ではないため、設計コンサルタントの選定が重要になる。 設計コンサルタントを依頼する場合には、会社の規模や従業員数のほかに、マンションの大規模修繕を取り扱った年数や大規模修繕の経験が何件あるのかといった実績、さらには担当者の人柄や対応力を総合的に判断し、依頼する前に理事会で慎重に検討することが大切だ。また、各地のマンション管理士会などの専門家に相談することで解決する場合もあるため、検討してみたい。
トラブル2 修繕…
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週刊エコノミスト
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