中国が目指す原子力強国 開発を進める次世代炉 窪田秀雄
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中国の原発の設備容量は2030年までに世界一になると見込まれる。次世代炉開発にも余念がない。
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日本の内閣に相当する中国国務院の常務会議は7月31日、山東省、福建省、遼寧省の3カ所、計6基の原発の建設を承認した。中国では、原発の建設は国務院の承認事項になっており、建設が承認された各原発は順次、着工される。昨年は10基の原発の建設が承認されており、1年半で16基が承認されるというハイペースだ。
中国では7月末現在、54基・計約5800万キロワットの原発が稼働しており、設備容量は、米国、フランスに次ぐ世界第3位だ。また、建設中の原発は24基・計約2670万キロワットに上り、世界全体の4割超を占める。承認から着工までのスピードも速く、昨年、国務院の承認を得た10基のうち、すでに5基が着工した。
福島事故で一時は減速も
中国では2008年ごろから原発の着工が加速し、09、10年には、それぞれ過去最多となる10基の原発が着工されていた。しかし、11年3月に起きた東京電力福島第1原発の事故を受け、原子力政策は大幅な修正を余儀なくされ、新規着工のペースは大幅にスローダウンした。ただ、しばらくして建設の速度は再び上がり、21年には6基が着工され、同事故以降、最多となった。22年も5基を新規に着工。今年に入ってもすでに2基が着工されている(図)。
今後の着工に向けた動きも具体化してきている。中国南部の防城港市で3基が稼働している広西チワン族自治区では、自治区政府と大手原子力事業者の国家電力投資集団が「白竜原発プロジェクト」を共同で進めるとした協力協定を締結した。同自治区では、同じく大手原子力事業者の中国広核集団が進める防城港プロジェクトの6基と白竜を合わせて、全部で12基の原発が稼働することになる。
業界組織である中国核能行業協会は、こうしたプロジェクトが順調に進めば、中国の原発設備容量は30年までに米国を抜いて世界トップに躍り出ると予測している。同協会によると、35年までに国内の発電量全体に占める原子力の割合は現在の2倍に相当する10%に達すると見込んでいる。北京大学の関係者は、30年に原発の設備容量が1億キロワット程度に達した後、60年までは2億~4億キロワット程度で推移するとみている。
野心的ともいえる原発プロジェクトの進展にともない、原発設備の国産化率も急速に上がってきている。国産炉の「華竜1号」(100万キロワット級加圧水型炉=PWR)を含めた第3世代炉の国産化率は90%以上に達している。政府機関である中国国家原子能機構の王毅・元副主任の発言によると、22年の国内の主要原発設備の出荷は、高速炉実証炉の炉心サポートや熱交換器などを含め過去最多の54台に達したという。
22年2月には、国家電力投資集団の主導により、上海に「国和1号産業チェーン連盟」が結成されている。同連盟は、23年に原発設備の全面国産化を達成し、25年に第3世代原発産業チェーンを構築・完成することを目標に、研究開発や設計、設備製造、土建、据え付けなどをカバーする国有企業、民…
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週刊エコノミスト
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