インタビュー「足元の購買力平価からみて1ドル=130円は妥当な水準」新原謙介ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ代表取締役兼CIO
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ドル・円予想では金利差を重視する見方が強いが、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの新原謙介氏は購買力平価を考慮し円高を見込む。(聞き手=浜條元保/中西拓司/村田晋一郎・編集部)
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── 能登半島地震の発生で、ドル・円予想は変えたか。
■経済見通しで具体的に変えたものはない。日銀は早期の利上げはやりにくくなったが、4月の利上げ(マイナス金利の解除)については、特に影響を与えるものではないと思っている。
── 過去の大震災では急激な円高が起きたが、今回は円安になっている。
■一般的に何かリスクが起こったら、日本の資産保有者が海外資産を売って円に転換し、日本にお金を戻す動きがあった。それが2010年代を通じて機関投資家の多くが為替リスクを取らなくなってきた。それに伴い、ドルを円に戻す必要が減ってリスクと円の関係が弱まってきた。
── 有事の円買い、リスクオフの円買いという意識が薄らいだ潮目はいつごろか。
■20年の新型コロナウイルス禍以降、円高・株安といったような円とリスク資産との短期的な相関がそれまでマイナス(逆相関)だったが、逆の動き(順相関)が一部で出ている。
米国景気はスローダウン
── 今年末の円相場は1ドル=125~130円と予想している。
■円高に進むという見方は変えていない。130円は我々の見方を訴える妥当な水準だと思っている。ただ、リスクもある。
── 円高に向かわないシナリオとはどんなものか。
■単純に日米の金利差が円安水準を支える可能性は否定できない。米国経済が予想以上に強くインフレが高止まりして、利下げできない可能性がある。また地政学リスクは昨年より今年のほうが高い。原油価格の上昇がインフレを引き上げて利下げしづらくなることもありうる。ただし金融引き締めの影響は昨年後半と今年1年間を通して徐々に出てきて景気はスローダウンに向かい、それが利下げをサポートすると見ている。
── 為替予想のファクターには金利差、需給、購買力平価があるが、最近は金利差で予想する見方が強く、購買力平価が使えないとの議論がある。
■購買力平価は2国間のインフレ率の差が、相対的な購買力の変化を導き、それが長期的な為替レート水準を決めていくというロジック。一定の指針としては成り立っており、特に乖離(かいり)が広がるにつれて修正余地が強まると考えている。我々の1ド…
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週刊エコノミスト
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