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国際・政治 書評

水木しげるの故郷・境港市でクリエイター育成事業がスタート 永江朗

 鳥取県境港市は『ゲゲゲの鬼太郎』などで知られる漫画家、水木しげるの故郷。境港駅から水木しげる記念館に至る800メートルの道は「水木しげるロード」と呼ばれ、道の両側には妖怪のブロンズ像が177体も並んでいる。筆者も以前おとずれたことがあるが、夕暮れどきの水木しげるロードとその周辺は独特の風情があり、いまにも妖怪が出てきそうだった。

 この境港市にクリエーターの卵を迎え、一定期間住んで創作活動をしてもらおうというプロジェクトがある。名づけて「とっとりクリエイターズ・ビレッジ」。事業主体は鳥取県で、講談社が運営業務を委託されている。

 ビレッジのメンバーに選ばれると、境港市内での創作活動費として月額20万円(税別)が支給され、境港市内のコワーキングスペース利用権も与えられる。担当編集者から定期的な助言・指導を受けられるほか、プロのクリエーターによるウェブを使ったセミナーも受講できる。メンバーとしての活動期間は2年間。

 ただし、誰でもというわけではない。応募できるのは、すでに漫画やアニメ、ゲームなど、デジタルツールを活用した創作活動をしていて、プロを目指している人。2024年3月31日時点で満18歳以上であること。応募時点で鳥取県外在住であり、24年4月から2年間は鳥取県内に住めること。そしてプロジェクト終了後も鳥取県に住み続ける意思があること(ただし住み続けることを確約する必要はない)。募集人数は5人だ。

 町おこしと人口減少対策とクリエーター育成を合わせたような事業である。すでに募集は締め切られ、書類選考を経て3月1日に面談通過者の発表が行われる予定だ。

 面白い事業だ。未来への投資として大きな意味がある。かつては、漫画家を目指すなら、まずは上京してチャンスをつかめといわれたが、デジタルが普及し発達したいまはそんな時代ではない。月額20万円が多いか少ないかはわからないが、生活の不安なく創作に打ち込めるのはクリエーターにとって大きいだろう。同じような事業が全国に広がることを望む。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2024年2月13日号掲載

永江朗の出版業界事情 水木しげるの故郷でクリエーター育成

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