義務は相続登記だけじゃない 増改築時の「表示登記」に注意 川本光範
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自己資金で建物を増改築したりする場合に、うっかり忘れやすいのが「表示登記」だ。これを怠ると、後の売買などで思わぬ支障が出る。
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改正不動産登記法の施行によって4月1日以降に義務化されたのは、所有権に関する権利部の名義変更(相続登記)についてだけだ。土地・建物の所在地や面積、地目、構造などに関する表題部の表示登記については、今回の義務化以前から一部を除いて義務化されている。ただ、表示登記自体も登記されていなかったり、誤っていたりするケースがままあり、不動産の売買などに支障が出ないよう注意が必要だ。
表示登記とは、日本の統治権が及ぶ領土内にある土地・建物について、その現況を明らかにする不動産の表示に関する登記だ。所有権などの権利が及ぶ不動産の対象範囲を、登記事項や図面で明確化して公示する役割を担っており、取引の安全に資することを目的としている。申請義務者が義務を怠った場合は、10万円以下の過料が規定されている。
このうち、建物の表示登記は、①屋根があり、かつ四方が壁に囲まれている家屋(外気分断性)、②基礎工事などで建物が土地に物理的に結合している家屋(土地への定着性)、③居宅、作業所、貯蔵庫などの目的のため、建物内に一定の利用空間のある家屋(用途性)を満たすもの──が対象だ。また、建物の増改築をした場合にも表示登記が必要になる。
未登記の大半は旧耐震
実際に、表題部がない未登記建物は少なくない。金融機関から融資を受けて新築・増改築する場合には、不動産登記の権利部に抵当権を設定するため、未登記のままとすることはまずない。しかし、自己資金で建物を新築したりした際、表示登記をすぐにしなくとも日常生活に支障はないため、そのまま未登記となっていることが多い。
そうした実態を示すデータは数少ないが、岐阜県羽島市が2019年7月、政府の地方分権改革推進本…
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週刊エコノミスト
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