金融庁が銀行に“脱手数料”圧力 矛先に「ターゲット型保険」も 川辺和将
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日銀の政策転換は、銀行ビジネスの前提を変えつつある。これまで収益を支えてきたリスク性商品販売への依存から脱却させようと、金融庁は圧力を強めている。
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金融庁が今、銀行に対してこれまで収益を支えてきたリスク性商品販売への依存から脱却させようと、制度改正によって圧力を強めている。超低金利下では貸出金利と預金金利の差がほとんどなく、銀行が本業だけで稼ぐことは難しかった。そこで、まとまった手数料収入が得られる投資信託などリスク性金融商品の販売に傾斜していたが、「金利ある世界」への転換がこれまでの前提を変えつつある。
銀行にとってリスク性商品の販売は、雀の涙ほどの預金利息に満足できない利用者との利害の一致もあり、各行が販売にいそしんできたが、不本意にも損失を抱えた顧客からの苦情やトラブルが相次いだ。毎月のように高い分配金を出す通貨選択型の投信や、特定の投資テーマに沿った銘柄に投資する「テーマ型」投信はその典型例で、リスクの高さに加え高い販売手数料や信託報酬も問題視された。
そこで、金融庁は2017年、手数料目当てで顧客を食い物にするような商慣習を改めさせようと、金融機関の行動規範として「顧客本位の業務運営に関する原則」(FD原則)を策定した。ただ、この時点でFD原則は法律上のルールではなく、強制力をもたなかった。当時、バブル崩壊後の不良債権処理の過程で「金融処分庁」と揶揄(やゆ)された時代への反省から、庁内で脱ルール主義の機運が強まっていたことが背景にある。
FD原則の策定後もトラブルは後を絶たなかった。23年6月には、金融派生商品を組み合わせた特殊な債券である「仕組み債」の不適切な営業態勢に問題が認められ、千葉銀行や傘下のちばぎん証券などが金融商品取引法に基づく行政処分を受けた。仕組み債問題の炎上は、首相の諮問機関である金融審議会内において、FD原則のルール化に向けた議論が始まるきっかけとなった。
曖昧な「最善利益義務」
しかし、今年3月の日銀のマイナス金利解除によって今、時計の針が逆戻りしようとしている。そもそも、貸出利息で収益が確保でき…
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週刊エコノミスト
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