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BaaSって何? いまやほとんど生活インフラ 大野博堂

 さまざまな事業者に銀行機能を提供するBaaS。その仕組みや歴史を分かりやすく解説する。

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 BaaS(Banking as a Service、サービスとしての銀行機能)とは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介して銀行機能を外部に提供するサービスを指す。これにより銀行業の免許を持たない事業者であっても自社のサービスに銀行機能を保持することが可能となり、自社顧客へのサービス向上が期待される。

 一般的にBaaSで提供される対象業務は「為替」「預金」「融資」、すなわち「銀行の3大業務」と呼ばれるものだ。形式的には、BaaSの提供元となる金融機関が有する機能やサービスを非金融事業者に提供する様態を取る。BaaSを利用する非金融事業者はBaaS提供元に対し、利用に際するイニシャルコスト(初期費用)のほか、口座数や取引量といった金融サービス基盤の利用実態に応じたフィー(手数料)を支払うこととなる。

 米国においては、日本に先行してフィンテックブームが生まれ、DX(デジタルトランスフォーメーション)のムーブメントが早期から高まった。米国では、不法滞在外国人の存在から銀行の口座開設審査が厳格化されていた。また、金融規制強化で中小企業の資金調達が困難となっていた。こうした金融サービスを取り巻く課題への対応として、非金融事業者が新たに銀行サービスを提供し始めた。

 オンラインで完結する金融取引が志向され、口座不要で送金サービスを提供するスクエアなどの決済事業者や、オンラインで中小企業向け融資を提供するスタートアップであるキャベッジがサービスの提供を始めた。2010年代後半、キャベッジは米国におけるBaaSモデルの起点として、日本でも一部流通業が採用を検討していた。

顧客の消費データ収集も

 なお、米国以外では、10年代初頭、ドイツのソラリスバンクにより最初のBaaSプラットフォームが登場し、欧州におけるBaaSの先駆者となった。米国と異なり欧州では、ソラリスバンクのほか、スペインのBBVAやドイツのフィドールバンクのように大手銀行が自らのバンキングシステムをベースとしたBaaSソリューションの提供を開始し、テック企業と連携することで業務領域を拡大してきた。

 世界のBaaS市場は、20年に約25億ドル(約3900億円)と評価され、31年には122億ドル(約1兆9000億円)に達するとの見通しもある。この成長の原動力は、電子商取引(EC)や小売り、ハイテク新興企業など、さまざまな業界での導入の増加である。

 BaaSソリューションは、サービス提供側からみた用語でもある。BaaSソリューションの提供を受けて実際の顧客向けサービスを行う事業者側からみれば、これは従来「組み込み型金融」(エンベデッド・ファイナンス)と呼ばれてきたものだ。例えば、タクシーアプリを利用することでサービス提供と決済が連動し、降車時に料金支払いが不要となる。こうしたサービスは、アプリ上に決済機能が実装されるエンベデッド・ファイナンスとして、人々の生活の…

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