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3メガバンクは株価に一服感あるものの長期成長の始点に立つ 丹羽孝一

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 3メガバンクは日銀の異常な金融政策の下、独自の強みを磨き続けてきた。今後の利益拡大にも自信を深めている。

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 2024年4月以降、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の3メガバンクの株価パフォーマンスに一服感が見られる。その理由として、投資指標の極端な割安さの後退、業績拡大が外部環境頼みであり、その剥落による将来成長率の鈍化懸念、円金利の上昇余地の乏しさなどが挙げられ、株価形成において当面の好材料は出尽くしたという見方がある。一方で、今後の業績拡大の余地は少なくなく、3メガバンクの株価は中長期的には上昇余地があると筆者は見ている。

 3メガバンクの25年3月期の会社計画合計の純利益は3兆円超と高水準にあり、各社は今後の利益拡大に自信を深めている。特筆すべきは、この間の各社の企業努力だ。確かに、利益水準の高さの背景には、歴史的円安、高水準の株式売却益、低水準の与信コストという外部環境という追い風がある。しかし、各社のコア事業である国内の商業銀行事業が歴史的低金利の下で伸び悩む中、各社独自の強みを磨き続けたことが成果となった。

 今後、日本の金融政策が本格的に正常化すると、コア事業の国内商業銀行事業の回復はもちろん、関連金融サービスの事業機会が増えるとともに、グローバル事業の拡大を通じた利益水準の上昇と、一層の資本蓄積が可能となる。これにより、顧客向けサービス維持のための再投資、顧客支援のためのリスクテーク余力、株主還元の拡充という企業価値向上局面に向かうと期待される。いわば、長期成長のためのスタート地点にようやく立ちつつあるのだ。

確信を持てない市場

 ではなぜ、市場は3メガバンクの将来業績拡大期待に確信を持てないのか。その理由の一つは、国内商業銀行事業の低成長・低収益性が簡単には変わらないという懸念だろう。現在の3メガバンクの国内商業銀行の低収益性は、日銀の異常な金融政策の下で起きた極端な事例であり、環境が変われば変わると筆者は見ている。

 一方、課題は個人や小企業向け事業の低収益性だ。低金利に慣れすぎた持続不能な日本の経済構造を正常化させる道は平坦(へいたん)ではない。そして、日本経済の産業構造が変わる中で企業倒産の増加や、日本の財政の持続可能性と金利上昇リスクがある。しかし、3メガバンクはこれらの想定された危機への対応を進めており、相対的に影響は小さい。

■三菱UFJFG

 MUFGは日本、アジア、米国に基盤を持つ国際的な金融サービスグループだ。利益の約4割が日本ビジネスで、日本では国内最大の顧客基盤とバランスシート規模を持っている。米国ビジネスは約3割程度で、法人向け金融サービスに経営資源を注力しており、米銀大手モルガン・スタンレーとの良好な関係は大きな強みである。

 また、アジアビジネスは2割程度となっている。MUFGがアジア太平洋(APAC)域内で保有するエクスポージャー(投融資残高)は世界最大の基盤を持つと見られる。現地化を進め、メコン地域やインドネシア地域でのアジア商業銀行とデジタル金融事業を強化し、今後の成長のけん引役にしようとしている。25年3月期からスタートした中期経営計画では、最終年度の27年3月期の営業純益2…

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