万年低位だった地銀株が「株主還元合戦」状態に 田村晋一
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配当性向の低い「出遅れ地銀」に対しては今後、株主からの還元圧力がさらに強まる可能性がある。
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2024年3月期決算で、配当性向の引き上げや自社株買いを発表した上場地銀の株価はそろって堅調に推移している。配当金を減配せず、配当水準を維持、または成長に合わせて増配し続ける「累進配当」を導入する地銀もあり、「万年低位株」だった地銀株は一転、「株主還元合戦」の様相を呈している。
伊予銀行(愛媛県)の持ち株会社いよぎんホールディングス(HD)は、配当性向を23.3%から25年3月期予想で37.9%に上げる計画を示し、株価を大きく上げた。北洋銀行(北海道)も32.2%(25年3月期予想)に上げる方針で、ともに年初来高値を更新している。一方、配当性向が30%台以下にとどまる地銀は市場から「マイナス」のレッテルを貼られている。
地銀各行が株主還元策を強化している背景には、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を意識した経営体制の見直しが大きい。以前は、海外のアクティビスト(物言う株主)の動きを受けて株主還元に取り組む上場地銀が多かったが、最近は投資家向けの1対1のミーティングを実施する地銀も増えている。
アクティビストの主張といえば、持ち合い株の解消やROE(株主資本利益率)の引き上げ──などだったが、こうした主張が国内機関投資家の中にも広がっており、地銀各行も耳を傾けざるを得なくなっている。
株主総会での取締役選任議案の賛成率がジリジリ下がっていることも、地銀が重い腰を上げる要因になっている。京都銀行を傘下に持つ京都フィナンシャルグループ(FG)は23年6月の株主総会で、土井伸宏社長の再任議案の賛成率が62%となった。京都FGは配当性向を53.1%(25年3月期予想)に引き上げたが、株主還元策は「株主総会対策」にもつながる。
右肩上がりの地銀株で、注目点は二つある。50%の配当性向をうかがうメガバンクや大手地銀がある中、30%台以下の「出遅れ地銀」に対しては市場の引き上げ圧力が強まる可能性がある。今年4月に累進配当の導入を発表した宮崎銀行など…
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週刊エコノミスト
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