新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online マンション管理&空き家

今後10年にマンション大規模修繕の2回目が集中 タワマンは修繕積立金が足りない恐れも 渡邊布味子

これから迎える2回目の大規模修繕ラッシュをどう乗り切るか…… Bloomberg
これから迎える2回目の大規模修繕ラッシュをどう乗り切るか…… Bloomberg

 今後10年で築26〜30年のマンションが続々と2回目の大規模修繕を迎える。見積書をもらってから積立金不足に気付く管理組合が続出することが懸念される。

>>特集「マンション管理&空き家」はこちら

 マンションの維持管理を行うのは所有者である。マンションは住戸の玄関ドアの内側と外側で所有形態が異なり、内側は各戸のマンション所有者の所有、外側はそのマンション全戸の所有者の共有となる。この共有部分が大規模修繕の対象であり、具体的にはエントランス、エレベーター、外廊下、駐車場、電気・ガス・水道などの配管、フィットネスジムなどの皆で使う施設があたる。

 大規模修繕は、十数年に1度、大規模な工事を行い建物自体の修復や設備を交換し、あるいは時代遅れの性能を改修して現在の新築建物の標準的な性能に近づけるものだ。国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(2021年度)によると、約7割のマンションが12〜15年周期で大規模修繕を行っている。

 大規模修繕の手順は、まず新築時に長期修繕計画を作成して大規模修繕工事の時期を決めておき、積み立て計画のとおりに修繕積立金を積み立て、必要に応じて長期修繕計画と積み立て計画を見直すのが理想である。しかし、計画どおりにはいかない場合も多い。

 最も懸念されるのが、修繕積立金の積立額が低く見積もられている場合である。当初の長期修繕計画の計算主体は売り主であるが、「毎月の管理費や修繕積立金等の負担額を下げてマンションを売れやすくしたい」という思惑を捨てるのは難しく、計画された毎月の修繕積立金は少なく見積もられる傾向が否定できない。

 また、新築時に適切に修繕積立金の計画が立てられていたとしても、大規模修繕を行うのは遠い将来である。建物の建築費は上昇を続けており、長時間労働に対する規制や人口減による労働力不足でさらに上昇していくと考えられるが、これらの不確定要素を織り込みつつ、10年後、20年後の大規模修繕の費用を正確に予測するのは不可能だ。実際に大規模修繕の工事時期まで修繕積立金の不足が分からない可能性がある。

築26〜30年が最高水準に

 これはエレベーターや機械式駐車場などの高額な設備の交換が推奨される2回目の大規模修繕で起こりやすい。国交省の実態調査によると、2回目の大規模修繕は築26年から30年くらいのマンションで行われることが多い(図1)。

 そして、これから10年の間、2回目の大規模修繕の年にあたるマンションは過去最高水準となる。不動産経済研究所によると、築24年に当たる1999年築の全国のマンション発売戸数は16.3万戸であった。それより20年前の79年築の1.6倍、20年後の19年築の2.5倍である(図2)。つまり、2回目の大規模修繕の時期に建設業者から見積書をもらってから、積み立てた金額では大規模修繕の費用に足りないと気づくマンション管理組合が相当数出てくることが予想される。

 なお、タワーマンションの場合は、国交省の調査では52.5%の施工業者が「施工計画全般が難しい」と回答した。難しい工事の費用は高いことに加え、タワマンの大規模修繕は工事事例が少ないため工事費の見積もりが困難で、修繕積立金の額が少ない可能性がある。東京都新宿区が20年に公表した区内タワーマンションの管理組合へのアンケートでは、48%が「今後の修繕積立金が…

残り1238文字(全文2638文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事