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今秋にも区分所有法改正案 マンション管理・再生の円滑化を狙い 吉田修平

管理組合総会での決議要件などが大きく変わる…… genzoh/PIXTA
管理組合総会での決議要件などが大きく変わる…… genzoh/PIXTA

 所在不明の区分所有者に悩んだり、老朽化しても費用面などから建て替えのハードルの高さを感じるマンションの管理組合は少なくない。そうした事態に対処するため、区分所有法が大きく見直される。

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 マンションを巡っては今後、建物の老朽化と区分所有者の高齢化という“二つの老い”がさらに進んでいくことが予想されている。これに対応し、法相の諮問機関である法制審議会が今年1月、区分所有法の改正要綱案を示しており、政府は今秋にも見込まれる臨時国会に区分所有法の改正案を提出するとみられている。本稿では改正要綱案のポイントを整理・解説したい。

 区分所有法はマンションなど区分所有建物の基本的な権利・義務関係を定めた法律である。今回の改正要綱案の概要は、大きく①区分所有建物の管理の円滑化と、②区分所有建物の再生の円滑化──に分けられる。他にも、団地の管理・再生の円滑化や、被災区分所有建物の再生の円滑化も盛り込まれているが、本稿では①、②のうち中心的な項目を取り上げる。

 ①ではまず、「集会の決議の円滑化」の方策として、所在不明な区分所有者を集会決議の母数から除外する仕組みが盛り込まれた。現行の区分所有法上は少なくとも年1回、区分所有者全員が参加する集会(管理組合の総会)を開かなければならないが、この集会で決議を成立させるには、区分所有者(頭数)と議決権(各区分所有者の専有部分の床面積割合)のすべてを母数とし、法定の多数決割合を満たす賛成を得る必要がある。

 しかし、現行法では所在が不明な区分所有者がいた場合、その区分所有者は集会の決議で反対したものと同様に扱われる。そのため、管理規約の改正などマンションの管理上、重要な決議が成立しにくくなる恐れがある。そこで、改正要綱案では所在が不明な区分所有者について、裁判所が他の区分所有者や管理者(管理組合の代表者)からの請求を受け、集会の決議の母数から除外する決定(除外決定)をすることができることとした。

 また、マンションでは管理に無関心で、集会に参加しない区分所有者がいても、集会の決議では反対したものとして扱われる。そこで、改正要綱案では普通決議や管理規約に関する決議などについて、集会への出席者による多数決の仕組みが提案されている。出席者による多数決の対象となる普通決議以外の決議については、原則的な集会の定足数を過半数としたうえで規約でこれを上回る割合を定めることも可能とする。

「専有部分管理制度」も

 ①に関連しては「区分所有建物の管理に特化した財産管理制度」も方策として盛り込まれた。現行法上は、専有部分の区分所有者が所在不明となっている場合、その専有部分を管理するために「不在者財産管理制度」や「相続財産清算制度」が利用されている。ただ、裁判所によって管理人が選任されても、所在不明な区分所有者の財産すべてを管…

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