インタビュー「区分所有法が改正されてもバラ色の将来にはならない」鎌野邦樹・早稲田大学名誉教授(法制審議会区分所有法制部会委員)
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マンションを巡るさまざまな課題に区分所有法はどう対処しようとしてきたのか。その歩みと限界について、法務省の法制審議会区分所有法制部会の委員で、区分所有法に詳しい早稲田大学の鎌野邦樹〈かまの・くにき〉名誉教授に聞いた。(聞き手=桐山友一/荒木涼子・編集部)
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区分所有法は民法の特別法として1962(昭和37)年に制定された。日本の分譲マンション第1号は53年竣工の宮益坂ビルディング(東京・渋谷)といわれており、マンションのような区分所有物件がまさに増えつつある時代だった。しかし、区分所有に関する規定はそれまで、棟割り長屋を想定して壁などの共有関係を定めた民法の旧208条くらいしかなかった。
その後、区分所有法はおよそ20年に1度、法務省の法制審議会での議論を経て改正されており、83年の全面改正では区分所有者が全員で管理組合を構成し、意思決定は多数決によることなどが定められた。また、老朽化などによる建て替えの規定を盛り込んだのもこの時の改正だ。区分所有法自体はドイツやフランスの法律を参考にして作られているが、建て替えの規定は日本で生まれた独自の制度だった。
建て替えの規定を盛り込んだのは、日本が地震の多い国だったからだろう。その後、95年の阪神・淡路大震災の被害を受けたマンションでは建て替えも進んだが、老朽化を理由とした建て替えの事例はまだ数少ない。建て替えに多額の費用がかかることが主な要因であり、今回の区分所有法改正の議論では建て替え以外の方策として「建物敷地売却制度」など思い切った制度を設けることにした。
ただ、マンションの再生に向けて…
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週刊エコノミスト
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