マンションが管理不全に陥るリスクは地方ほど高い 澤田亮
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踊り場に穴が開いた非常階段、ガラスが割れたままの非常扉……。地方のマンション管理の実情は、東京など大都市部に比べれば大きな差がある。
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分譲マンションはいまや日本の1割強の人々が住むが、高齢化などで手入れの行き届かない管理不全状態のマンションが増えている。滋賀県野洲市では2020年、管理不全の末に廃虚化した地上3階建て9戸のマンションについて、市が区分所有者に代わり空き家対策特別措置法に基づく行政代執行によって撤去する事態に追い込まれた。
実は、マンション管理には大きな地域差があることをご存じだろうか。管理は多くの場合、管理組合から委託を受けたマンション管理会社が行う。管理会社が各マンションに「フロントマン」と呼ばれる担当者を付け、管理組合運営の補助や、実際に清掃や事務を行う管理員との調整などを行う。大手管理会社は全国組織が多く、提供される管理のレベルも安定している。
しかし、地元の管理会社となると、フロントマンは1人という小規模なところも多い。必ずしも管理の質が悪いわけではないが、属人的であったり、チェック機能がなかったりする場合が多い。ここに「住人の無関心」と「自治体のバックアップ体制の欠如」が組み合わさり、不幸となる場合がある。筆者は新潟県内を中心に活動しているが、経験した管理不全寸前マンションは次の通りだ。
あるマンションの住人から筆者に相談があった。「委託先の管理会社が倒産し、管理がストップした。電力会社から突然、電気料金未納のため送電を止めるという連絡があった」とのことだった。聞くと、そのマンションには管理規約がなく、管理組合もない。管理組合の仕組みすら知らなかった。毎月の管理費や修繕積立金は、管理会社から請求されるまま支払っていた。
修繕積立金は回収不能に
管理や修繕などは管理会社がすべて独断で実施していた。変だと思った相談者が、管理会社に会計状況を問い合わせても、梨のつぶてで回答がない。そうするうちに管理会社が倒産した。修繕積立金などは管理会社の通帳で管理していたため、回収不能となった。マンション管理業者は国土交通省への登録が必要だが、この管理会社は登録していなかった。「悪徳管理会社」による典型的な被害の構図だ。
マンションの「管理不全」とはどういう状態なのか。明確な定義はないが、東京都の「東京 マンション管理・再生促進計画」では、「維持・管理や修繕が適切に行われず、外壁が落下するなど周辺にも悪影響を与えている状態」とある。マンション管理を放棄した状態といっても過言ではなく、外壁が劣化してソフトボール大の塊…
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週刊エコノミスト
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