国交省がマンション第三者管理方式にガイドライン 管理の“他人任せ”に警鐘 香川希理
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いまや約3割の管理会社で導入されている「第三者管理方式」だが、悪用されれば利益相反の問題が生じる危険性をはらんでおり、国土交通省がついに腰を上げた。
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マンション管理に関して、管理会社が管理組合の理事長(管理者)を代行する「第三者管理方式」が急増する中、ついに国土交通省が今年6月、「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を公表した。第三者管理方式は「煩わしい理事会業務からの解放」を売りに人気を集める一方、利益相反などの問題が指摘されており、野放図な第三者管理方式導入への大きな警鐘となる。
第三者管理方式がマンション管理の新たな方式として急増したのはここ数年だ。主な背景には、区分所有者の高齢化や共働きの増加による「管理組合の役員の担い手不足」問題がある。ファミリー向けが多いマンションでも「役員の担い手不足」が深刻となり、対策として管理会社が管理組合に代わって管理者となるサービスに人気が集まったのだ。
実際、23年12月にマンション管理業協会の会員社を対象に実施された実態調査によると、回答した管理会社152社のうち、3割にあたる48社が「導入している」と回答した(図1)。実態調査は、ガイドライン策定に向けて23年10月~24年3月に5回にわたって検討を行った、国交省の外部有識者会議「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ(WG)」の第3回資料で公表された。
この第三者管理方式自体は悪いものではなく、管理組合が適正な形で採用すれば、「役員の担い手不足」問題解決の有用な選択肢の一つになりうる。しかし、WGでたびたび議論されてきた通り、悪用されてしまえば利益相反の問題が現実化し、しかもそれを区分所有者側で是正することが困難になる、という危険性をはらんでいる。
利益相反となりうるのは、主に大規模修繕工事などの発注の場面である。修繕工事を管理会社が受注することは珍しくないが、管理組合としては費用を安くしたいと考える一方、管理会社は高い金額で受注したいと考える。この時、第三者管理方式で管理組合と管理会社が一体となっていると、費用を安くしたいという動機が働きにくくなる。
理事会方式へ「復帰困難」
また、管理規約を変更して第三者管理方式をいったん導入すると、管理組合運営を再び区分所有者による理事会方式に戻すことが事実上困難になる。管理規約の変更には現行の区分所有法上、管理組合の総会で区分所有者(頭数)と議決権(各区分所有者の専有部分の床面積割合)のそれぞれ4分の3以上の決議が必要だが、管理会社に管理組合運営の主導権が移ってしまうと、再び管理規約を変更する誘因が働かなくなる。
現実問題として、一部の管理会社や管理組合では第三者管理方式をめぐる問題が顕在化し、マスコミなどもたびたび報道するように、区分所有者からの第三者管理方式自体や、それを悪用する管理会社に対する抗議の声が徐々に大きくなっていた。こうした実態は、国交省がガイドライン策定に向けて23年12月~24年1月に実施したパブリックコメントからもよく分…
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週刊エコノミスト
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