中古住宅の「ホームインスペクション」を空き家流通の“切り札”に 荒木涼子・編集部
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戸建てなどの中古住宅は図面が残っていなかったりし、購入する側にも不安が少なくない。そうした不安を取り除くのがホームインスペクションだ。
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空き家の増加が止まらない一方、まだ使える中古住宅の流通は、日本では欧米に比べ極端に進んでいない。その一因に購入する側の戸建てなど中古住宅への不信感がある。そうした不信感を払拭(ふっしょく)するため、国が専門家による住宅診断サービス「ホームインスペクション」の普及に力を入れている。
ホームインスペクションとは、専門資格を持つ「ホームインスペクター」が国の基準に従い、建物の基礎や外壁のひび割れ、雨漏りなどの不具合がないかなどを目視や機器で確認して、劣化の有無や具体的な状況を写真付きの報告書にまとめる。物件の規模や業者によって異なるが、検査費用は6万円程度以上が目安とされている。
国内の中古住宅流通は停滞を続ける。国内の全住戸流通量に占める中古住宅のシェアは20~25%程度で推移しており、国土交通省によると米国の76.4%、英国(ウェールズ地方を除く)の83.1%、フランスの75.2%に比べて大幅に低い。
中古住宅流通では売り主も買い主も、トラブルへの不安は絶えない。住宅リフォーム・紛争処理支援センターの相談窓口「住まいるダイヤル」への中古住宅に関する相談は2022年に1万2000件を超え、10年から倍増している。
中古住宅流通を活性化させるため、国も法改正などでホームインスペクションの活用を後押ししてきた。18年には改正宅地建物取引業法が施行され、仲介業者に対してホームインスペクションのサービスを売り主・買い主双方に説明することなどを義務付けた。
宅建業法改正で本腰
それでも、仲介業者の姿勢は後ろ向きで、ホームインスペクションの希望をやんわり断るケースも少なくなかった。国交省が22年1月に実施した、中古住宅を売買した消費者向けアンケートでは「売却・購入の際に、何らかのインスペクションを実施したか」との問いに、「実施した」は37.5%にとどまった。
また、仲介を行う宅建業者へ22年秋に実施したアンケートでは、回答企業のうちホームインスペクション業者のあっせんが「一律でなし」とした企業は74.1%に上った。そこで国は宅建業法を改正し、今年4月から消費者が仲介業者と結ぶ「媒介契約書」にあっせん「なし」…
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週刊エコノミスト
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