「厳しい現実を国際収支は物語る」加藤出・東短リサーチチーフエコノミスト
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5回にわたり活発な議論が展開された「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」懇談会。参加した委員に聞いた。(聞き手=浜條元保・編集部)
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さまざまな専門分野を持つ有識者が議論を重ねる有意義で楽しい懇談会だった。国際収支という切り口から長期に低迷する日本経済の構造問題を浮き彫りにできたと思う。報告書にまとめられた処方箋は、企業の新陳代謝を促し生産性を向上させるなど目新しいものではない。長年指摘された課題に向き合ってこれなかった事実に対して反省する場ともなった。このまま問題を先送りし続ければ、厳しい将来が待ち受けると強い危機感を国民全体で共有できたらいいと思う。
私個人としては、構造問題に向き合えずにきてしまった背景の一つに、2013年に始まったアベノミクスと日銀による異次元緩和があると認識している。デフレが長期経済低迷の原因で、日銀が強力な金融緩和を実施すれば、インフレに転換して経済が活性化するというリフレ政策は、閉塞(へいそく)感が強かった当時の国民に受け入れやすいものだった。実際にその後、円安・株高が進むと日本経済が復活するという幻想を抱いた。
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