騰勢が続く米国株 IT株の次は「グリッド」「QOL」関連銘柄か 三牧洋介
有料記事
5年半で2倍超も上昇した米株価指数。相場はすでに、この上昇をけん引したハイテク大型株から、その先に向けて動き出している。
>>特集「世界&日本経済下期総予測」はこちら
2024年後半の米国株式市場は、これまで上昇ペースが速かったことから、秋口にかけてスピード調整を想定する。当面は一定の幅で変動するレンジ相場を見込むが、いったんは利益確定売りで調整してもおかしくない。その後は、年末にかけてじり高となる展開を予想しており、24年末のS&P500株価指数は7月19日時点の5500ポイントよりやや高い5600ポイントの水準を見込んでいる。
今年の米国株市場は企業の1~3月期業績発表が本格化した4月中旬以降、騰勢を強めた。好業績や利下げ期待に加えて、6月27日のバイデン大統領とトランプ前大統領によるテレビ討論会後は、トランプ氏勝利のシナリオを織り込む形で一段と上昇した。ただ、バイデン大統領がその後、大統領選からの撤退を表明し、11月の大統領選本番に向けた民主党陣営の巻き返し次第では、別のシナリオが織り込まれる可能性も十分ある。
短期的な好材料が出尽くした感がある中、これから先の米国の利下げシナリオの下で、日本株をはじめとする米国以外の資産を物色する動きも出やすい環境だ。米国株はいったんは横ばいとなり、利益確定売りによって若干調整するくらいが、むしろ健全ともいえるだろう。ただし、米株式市場の長期的な上昇トレンドが終わったとはみていない。予測した年末の株価はあくまで通過点であり、今後も上昇を続けるとみている。
米国経済は課題を抱えながらも、長きにわたって成長を続けており、米国企業も存在感を示してきた。米国経済は経済に占める民間部門の割合が高いとされ、新たな技術やビジネスモデルを生み出す企業も多い。そのような特徴のある米株式市場に投資する上では、大統領選のような政治イベントに過度に影響されることなく、長期的な成長機会に目を向けることが大切だ。
マグニフィセント7の先へ
実際、米株式市場の過去の価格形成には、利益成長が大きな役割を果たしてきた。例えば、S&P500は今年6月末までの5年半の間に2倍超の上昇を記録した(図1)。この上昇幅を利益成長による部分と株価収益率(PER)の拡大による部分に分解してみると、かなりの部分を利益成長で説明できる(図2)。株価の先行きを考える上でも、利益成長が鍵を握るといえよう。
国際通貨基金(IMF)によれば、25年の米経済成長率は1.9%と、24年の2.6%から減速する見通しであり、S&P500のコンセンサス予想では24年と25年の企業業績はそれぞれ11.8%、8.7%の成長が見込まれる。現在の株式市場のバリュエーションは、24年の予想PERで22倍台とやや割高な水準にあり、一層の拡大は見込みにくい。
そのため、これから先の株式市場全体の上昇率は、利益成長並み前後にとどまる公算が大きく、したがって個別銘柄の選別がより重要となろう。銘柄選別の観点では、米株式市場のけん引役がエヌビディアなど少数の銘柄に偏っていることがしばしば指摘される。実際、24年1~6月期ではS&P500の構成銘柄中、S&P500を上回るリターンを上げた銘柄は127銘柄と、全体の4分の1程度にとどまった。
その中には、「マグニフィ…
残り1223文字(全文2623文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める