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マーケット・金融 世界&日本経済下期総予測

日米金利差だけじゃない“超円安”に拍車を掛ける三つの事情 立石宗一郎

ドルに対する円の価値はどこまで下落するのか…… Bloomberg
ドルに対する円の価値はどこまで下落するのか…… Bloomberg

 年初から大幅に進んだ円安の背景には、1月から始まった新NISAによる個人の投資資金流出も影響している。

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 ドル・円相場で円安が急速に進行している。年初に1ドル=140円台後半で取引が始まっていたのが、7月上旬には161円台後半まで下落し、1986年12月以来の円安水準となった。今年11月の米大統領選で共和党候補となったトランプ前大統領のドル安を志向する発言もあり、足元では一時153円台まで円高となったが、経常収支をめぐる日本の構造変化が大幅な円安に影響している可能性は見逃せない。

 為替レートは、金利差の影響を強く受けることが知られている。特に、米国が利上げ局面入りした2022年以降は、金利差と為替レートの連動性が強まり、日本円は日米金利差の急拡大で大幅に減価した(図1)。為替相場と金利差が連動しやすい理由は、低金利の通貨よりも高金利の通貨で運用する方が収益を得られやすいためである。

 投資資金が低金利の日本から高金利の米国へ移動することで、ドル買い・円売り取引が発生し、円の下押し圧力となる。さらに、足元にかけて金利差がかなり開いていることから、低金利の円で調達し、高金利のドルに交換して運用することで、運用益と金利のサヤを稼ぐ「円キャリートレード」が活発化している。こうした取引の増加がドル・円相場と金利差の相関を一段と高めている。

 日米金利差が拡大している背景には、両国の金融政策の違いがある。米国では新型コロナウイルス禍以降、急騰したインフレを抑制するために、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を大胆に引き上げて、金融引き締めを行ってきた。一方、日本では、日銀が景気への配慮などを理由に政策金利の据え置きを続けるなど、緩和的な姿勢を維持してきた。

 日銀は今年3月にマイナス金利を解除した後も、緩和的なスタンスの継続を強調しており、当面の間、日米金利差は縮小しないとの見方が台頭した。これが円安を助長したとみられる。もっとも、最近のドル・円相場は、日米金利差だけでは説明がつかないほどに円安が進行している。次の3点に示す通り、日本と海外の資金フローの変化が円安に拍車をかけている可能性がある。

新NISAで資金流出

 第一に、日本企業が現地生産などで稼いだ外貨が海外に滞留していることである。海外との貿易取引や金融取引などによる収支を示している経常収支は、日本は黒字で推移している。経常収支の黒字が拡大すると、稼いだ外貨を円転する取引が増えるため、円高要因となるケースが一般的である。しかし、近年の黒字は10年代初頭までのような輸出主体ではなく、海外現地法人などからの利息や配当が大きな割合を占めている(図2)。

 この背景として、08年のリーマン・ショック後に、日本企業が海外に工場を移転する動きが活発となったことがある。海外拠点で稼いだ外貨が日本へ還流するなら、日本円に転換する「円転取引」が増えて円高圧力が高まるものの、その3割程度は外貨のまま円転されず、現地で再投資される傾向にある。こうした再投資収益を除くと、経常収支の黒字額は大きく縮小しており、円転需要が高まりにくい構造に変化している。

 第二に、貿易赤字の増加も挙げられる。昨年の日本の貿易収支は6.6兆円の赤字で、赤字は2年連続となった。日本企業が海外生産にシフトした結果、…

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