マーケット・金融 世界&日本経済下期総予測

プロ4人が予測する年末のドル・円相場

 大きく揺れ動くドル・円相場。今年末の見通しを専門家4人に示してもらった。

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1ドル=155円

9月利下げ見送りでドル高 山本雅文

 ドル・円相場は米国の金融政策次第の展開であり、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を据え置く間はドルが高止まりする。しかし、12月に利下げを開始し、その後、2会合に1回のペースで利下げを続ける道筋が明確化すれば、ドルは下落基調に入る。

 市場では9月の利下げ開始が織り込まれているが、9月利下げは見送られる公算が大きい。そのため、過度な利下げ期待の巻き戻しが起こり、今秋にかけてドルに反転上昇の余地が残っている。米国経済は堅調であり、FRBが重視する米個人消費支出(PCE)物価指数のコア(食品とエネルギー除く)は前年比2%台後半で高止まる見通しとなっているからだ。

 利下げ時期と並ぶ不確実要素は11月の米大統領選で、トランプ氏勝利ならドル高を予想する向きが多い。しかし、原油・天然ガス採掘推進によるエネルギー価格低下やドル・円相場への口先介入もあり、ドル・円相場がどちらに向かうか判然としない。

 日銀が金融政策正常化を進めても、ドル・円相場への影響は限定的だろう。将来どの水準まで利上げが行われるかはっきりしないほか、実体経済が軟調で、正常化ペースは緩慢になるとみている。日本政府の円買い介入も円安抑制に寄与している。米国の利下げ開始がずれ込む中で、再び1ドル=160円方向に上昇すれば、日本政府の追加介入によって円安はある程度抑制されるだろう。

(山本雅文〈やまもと・まさふみ〉みずほ証券チーフ為替ストラテジスト)

1ドル=152円

変動性の高まりに要注意 尾河真樹

 日米の実質金利差とドル・円相場は特に2021年以降、相関性が極めて高かったが、今年の6月以降は日米実質金利差が縮小する一方、ドル・円相場が上昇するという乖離(かいり)がみられた。その背景には、ドル・円相場のボラティリティー低下に伴う、日米の短期金利差を狙った円キャリー取引の活発化があったと思われる。

 実際、シカゴ通貨先物市場IMMにおける投機筋の円ポジションは、ネットの円売り越し(円ショート)が7月2日時点で18万枚を超え、過去最大を記録した。しかし、米利下げと日本の追加利上げの可能性が見えてきた中で、徐々に日米実質金利差とドル・円相場の相関性は回復しよう。

 米国経済は依然として底堅く、FRBは9月以降、四半期に1度のペースで0・25%ずつの利下げを予想するが、25年10~12月期までで利下げは終了するとみている。このため、今後のドル・円相場の下落余地もさほど大きくはならず、年末は1ドル=150~152円前後に着地すると予想する。

 波乱要因は今年11月の米大統領選で、どちらの候補が勝ってもインフレが加速しそうだ。ただし、ドル安志向のトランプ氏が勝利した場合は、貿易不均衡是正といったドル安を促すような政策が出てくるタイミング次第で、方向性は変化しよう。このため、年後半のドル・円相場はドル安・円高方向との見方は変わらないものの、ボラティリティーが高まる可能性に要注意だ。

(尾河真樹〈おがわ・まき〉ソニーフィナンシャルグループチーフアナリスト)

1ドル=149円

円安基調は7月後半に終了 深谷幸司

 ドル・円相場は年初来、過剰ともいえる円安が進み、特に4月以降は日米長期金利差の縮小に反してドル高・円安が進んだ。日米金融当局のスタンスの違いから短期金利差の縮小には時間を要する、との見方が、円キャリー取引(低利の円を調達して高利の通貨で投資する取引)の投…

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週刊エコノミスト

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