⑭蔓延するコンプレックス商法 林裕之
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虫歯や歯周病の予防法はホームケア(自分で歯磨き)、プロケア(歯科医や歯科衛生士によるケア)、噛み締め、歯ぎしりの是正の3本柱。
>>連載〈歯科技工士だから知っている「本当の歯」の話〉はこちら
歯列矯正を勧める理由に「歯並びの乱れは虫歯や歯周病、顎(がく)関節症の原因となる」といいます。前号に登場した審美歯科評論家の歯科医は、「歯並びが悪いと全てに悪い」とまで豪語したのです。果たして本当なのでしょうか?
歯並びの乱れと虫歯、歯周病、顎関節症を結びつける医学的エビデンスは現時点で存在していません。一方で歯並びと虫歯や歯周病、顎関節症は相関しないという論文はあるのです(矯正治療の基礎知識 多摩デンタルインフォメーション)。
一般的に歯が重なっていると、その部分が磨きにくい→その部分から虫歯や歯周病になる→歯列矯正して歯並びを整えると磨きやすくなる→虫歯や歯周病が予防できると思われています。素人目にも納得しやすい、この構図を専門家も信じているだけなのです。
虫歯も歯周病も基本的な予防法は、ホームケア(自分で歯磨き)、プロケア(歯科医や歯科衛生士によるケア)、噛(か)み締め、歯ぎしりなどの是正──この3本柱です。前述の構図にはプロケアが抜け落ちています。素人が磨きにくい部分は歯科医や歯科衛生士に磨いてもらえばいいのです。歯科医院には専用の機器があるので、きれいになります。自分で磨けない部分はプロケアに頼り、噛み癖是正の対策を実践すれば、高額な歯列矯正をしなくても虫歯や歯周病は防げるはずです。
男性アイドルの賢い選択
男性アイドルのMさんはこれを実践しています。彼は左右の八重歯が特徴です。やはり歯列矯正を勧められるそうです。しかし歯列矯正する気はなく、そのかわり定期的なプロケアを欠かさない、と言っていました。
歯列矯正で虫歯や歯周病になったり、奥歯が噛み合わない、口が開かない、頭痛、肩こり、不眠、パニックなどリスクは多岐にわたります。実際にあった症状です。もちろん誰にでも必ず起こるわけではありません。でも、Mさんは歯列矯正をしないのですから、このリスクはありません。磨きにくい部分は定期的なプロケアでリスク管理しています。
歯の一番の役割は食物を噛み砕くという機能です。歯並びが乱れていても、咀嚼(そしゃく)できることが肝心です。本来の歯科矯正はこの機能に問題があるときの改善法なので…
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週刊エコノミスト
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