金価格は年末に2600~2700ドルへ 米の利下げで上昇局面に 池水雄一
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ドル・円相場で円安を修正するのは容易ではなく、金価格は円建てでもさらに上昇を続けるだろう。
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ニューヨーク金先物価格は昨年10月、米長期金利が5%まで上昇しても、1トロイオンス=2000ドルと当時の歴史的高値に近い水準を維持していた。米長期金利が前回5%だったのは2007年で、当時の金先物価格は1トロイオンス=700ドルだった(図)。金利が上がっても金価格が下がらないという、これまでの常識に反する状況が起きている。
その背景には、地政学的リスクの高まりからの新興国の中央銀行、特に中国人民銀行が「ドル離れ」と「ゴールド買い」を進めていることがある。22~23年の中央銀行のゴールド買いは年間1000トンを超え、鉱山生産量の3分の1近い量を2年連続で中央銀行が吸収しているのだ。
欧米の機関及び個人投資家は金利高を材料にゴールドを売ってきたが、新興国中央銀行のゴールド買いとアジアの個人投資家のゴールド現物買いがその量を上回っている。そして、今年7月9日には1トロイオンス=2483ドルという歴史的高値を付けた。
7月半ば現在、米物価の下落傾向がはっきりとし始め、9月には米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げするとの見方が強まった。今まで金利高を材料にゴールドを売ってきた欧米の投資家も、今後は売りから買いに回るだろう。今年後半はおそらく、これまで以上の勢いで高値を追うのではないか。
円建てでもさらに
実際、00年以降の過去3回の米利下げのサイクルでは、金価格は最初の利下げ後、利下げ終了までの間にはっきりと上昇しており、01年の利下げ開始時は31%、07年は39%、19年は5%を記録している。今回の利下げサイクルが9月から始まるとすれば、少なくとも20%くらいのゴールド上昇要因となりうるだろう。
そのため、現在の2400ドルから今年末には2600~2700ドルくらいまで上昇してもおかしくない。また、円建てゴールドは円安の分、ドル建てゴールドよりもさらに頻繁に歴史的高値を更新している。円建て金スポット価格の過去最高値は今年7月18日に付けた1グ…
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週刊エコノミスト
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