週刊エコノミスト Online 編集長インタビュー

神宮外苑で考える持続可能な社会に必要な環境アセスメント  原科幸彦(千葉商科大学学長、国際影響評価学会元会長)

見物客でにぎわう神宮外苑のイチョウ並木
見物客でにぎわう神宮外苑のイチョウ並木

「環境アセスメント(影響評価)」とは何か。一言で言えば、持続可能性を確保する、持続可能な開発を確保するための社会的な手続き、ということになる。もう少し具体的に言うと、人間の行為が環境に及ぼす影響を事前に予測、評価し、できるだけその影響を緩和する方策を講じるための、社会的な手続きだ。

 その手続きを進める上で大切なのは、環境や社会への影響に配慮したかどうかを、きちんと社会に伝えること。そのため「アカウンタビリティー(説明責任)」という言葉ともつながってくる。環境や社会への影響に配慮するアカウンタビリティーを果たすための手続きが環境アセスメントだ、と言える。

 環境アセスメントの対策で一番大事なことは、影響を回避すること。これが第1の方法。回避できない場合はできるだけ影響を低減するのが第2のやり方。回避も低減も難しい場合は、代償的な措置をとって補完するのが3番目ということになる。

 従って回避または低減することがまず重要。ということは、計画を修正することも当然求められる。計画が固まる前のなるべく早い段階で始めれば修正が可能だ。そのため、アセスメントはできるだけ早く着手することがとても大切なことだ。

 早い段階でアセスメントに着手することが望ましいが、ある程度中身が固まらないと影響が分かりにくいという面もある。そこで、A案に対し、B案、C案という代替案を想定し、比較検討するというプロセスから始めることで非常に効果的なアセスメントになる。しかし日本ではなかなか代替案の比較検討をやりたがらなくて、案が固まってから公表することが多い。そのため結果的に対策が遅れることも多い。

 前静岡県知事の反対によって工期が伸びているリニア中央新幹線がいい例だ。まさに計画を構想する段階でしっかり情報交換して社会の意見をしっかり聞いていればあんなことにはならなかった。

 私自身はリスクマネジメントの面からトンネル区間が長いリニアには疑問を持っている。地下の交通施設は非常にリスクが大きい。地震があってトンネルに水が入ってしまえば構造物が壊れなくても使えなくなる可能性がある。また、JR東海が資金豊富なのは東海道新幹線のおかげだが、そうした国鉄の遺産の恩恵を独占的に使うのもどうかと思う。

神宮外苑は100年前のSDGs

 私の専門領域である環境アセスメントの観点から、非常に問題が多いと考えているのが明治神宮外苑(東京…

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