週刊エコノミスト Online 鉄道新時代

鉄道運賃の値上げ拡大へ 国交省が経費アップを実質認める 梅原淳

新方式導入で、運賃改定の動きが活発になる
新方式導入で、運賃改定の動きが活発になる

 コロナ禍の混乱を経て、物価高騰や利便性向上を理由に、運賃値上げを発表した鉄道会社が出てきている。こうした機運を受けて、国土交通省も実態と乖離した従来の運賃算定方法を見直しており、運賃改定の動きは広がると見られる。

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 鉄道会社各社の乗車券代に相当する運賃はJR旅客会社、大手私鉄、地下鉄に関しては国土交通大臣の認可制となっている。JR旅客会社が営業を担う新幹線は全列車が特急列車であるから特急料金も実質的に乗車券代と考えられ、同様に認可が必要だ。

 鉄道は地域を独占して営業を実施するケースが多く、いま挙げたJR旅客会社、大手私鉄、地下鉄は輸送規模が巨大なだけに国民への影響もまた大きい。公共性の観点から認可運賃制が採用されたのだ。

 各社の運賃・料金は自由に設定できるのではない。電気料金と同様に総括原価方式が採用され、営業費に事業報酬を加えた金額から収入額を差し引いた金額が所用増収額となってこの範囲内で運賃を設定可能だ。しかも、営業費のうち、諸税や減価償却費などを除いた人件費や経費は各社が実際に支払った経費を国土交通省が定めた数式によって基準コストを算定する。

 この基準コストをJR旅客会社同士、大手私鉄同士、地下鉄同士で比較することによって上限が決められる仕組みをもつ。基準コストが実際のコストを下回る例もあり、適正なコストで営業して効率的な経営を心がけよと国に指導されているのだ。

新たな算定係数を追加

 公共性の維持や物価の安定に効果のあったこの方式もコロナ禍後の時代の変動、さらには頻発する自然災害の前に見直しが必要となった。経営環境が激変しても基準コストを決める数式はすぐには変わらないので運賃改定までタイムラグが生じていた。また、人件費や経費が全国一律査定で実態との乖離(かいり)が問題となり、特別損失として計上された自然災害での復旧費用はそもそも基準コストの対象外といった問題が生じていたからだ。地方の路線では運賃を改定できないので営業を取りやめてしまう事例も現れ、公共性が失われる結果となっている。

 こうした状況に鉄道会社中最大の規模をもつJR東日本は各社…

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