インタビュー「女子大が不要な時代にするため女子大は必要だ」森本あんり・東京女子大学学長
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「女子大不要論」がまかり通る風潮に真っ向から異を唱えるのが、東京女子大学の森本あんり学長だ。その真意を聞いた。(聞き手=堀和世・教育ライター)
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もりもと・あんり 1956年神奈川県生まれ、米プリンストン神学大学院博士課程修了(Ph.D)国際基督教大学教授、同学務副学長を経て、2022年より現職。
私立大の中でも苦戦が伝えられるのが女子大だ。今年度から恵泉女学園大学、神戸海星女子学院大学が学生募集を停止した。両校がそろって理由に挙げたのが、近年の女子学生の「共学志向」だ。実際、共学化する女子大は増えている。学習院女子大学は2025年度から学生募集をやめ、翌26年度に学習院大学と統合する。
「一般論だが、共学化すれば生き延びられるという問題ではない。それぞれの大学がオファーするものが、明確かどうかが問われている。18歳人口の半分しか相手にしないのは経営的に不利だというが、そんなことはない。米国では、かつて約200校あった女子大が40校程度に減ったが、むしろ女性版アイビーリーグと呼ぶべきエリート校になり、志願者が増えている」
反時代精神としてのリベラルアーツ
なぜ米国で女子大人気が根強いのかといえば、米国もジェンダーギャップ指数が世界43位(24年)と、男女平等の観点で決して先進国といえない状況が背景にある。性の固定観念を強いられず自由に生きたいと願う女性が豊かな知性、教養を身につける場として女子大のニーズが高いという。
「なぜ共学化しないのか。理由は簡単だ。大学の規模を2倍にしない限り、単純に女子学生は半分になる。それでは日本のジェンダーギャップは縮まらない。世界との差が埋まるのに132年かかるといわれている。そんなに待っていられない」
世界経済フォーラムが今年6月に発表した24年のジェンダーギャップ指数で日本は146カ国中118位にとどまる。とりわけ国会議員の男女比や、同一労働における賃金の男女格差など政治、経済分野の女性参画の低さが足を引っ張っている。
「昨年、アジアの大学の学長が集まる国際会議があり、私が司会をした。韓国の梨花女子大学のキム総長が『韓国の国会議員の半分が女性になったら共学化を考える』と発言した。韓国は女性の進出が遅れていて恥ずかしい。ジェンダーギャップ指数は105位(23年)だ。そんな状況で男女共学というのは論外だと。隣でそれを聞きながら、私は穴があったら入りたかった。日本はさらに低い。日本でも国会議員が男女同数になったら、東京女子大学は女子大であることを再考するだろう。女子大などいらない時代に早くするために女子大は必要だ」
東京女子大学は1918(大正7)年の創立以来、「リベラルアーツ教育」を掲げる。リベラルアーツは一般教養とか基礎学問などと訳されるが、ぴったりの日本語を探し当てるのは難しい。
「リベラルアーツ…
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週刊エコノミスト
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