週刊エコノミスト Online 日立・ソニー・パナソニック復権の道のり
パナ・日立・ソニーの内情と本音を語る匿名座談会
有料記事
ソニー、日立の復活は本物か。パナソニックの低迷はいつまで続くのか。3社に詳しい市場関係者と業界紙記者が内情と本音を明かした。(構成=稲留正英・編集部)
>>特集「日立・ソニー・パナソニック復権の道のり」はこちら
株式市場の評価を見ると、時価総額が18兆円の日立製作所、16兆円のソニーグループに対し、パナソニックホールディングスは3兆円と大きく出遅れている。それをどう見るか。
A(電機アナリスト) 2010年代の前半までは、パナソニックとソニーの株価が連動する傾向にあったが、15年くらいから開き始めた。両社とも元々、家電が主力だったが、ソニーは金融、ゲーム、映画に、パナソニックはB2B(法人向け)に事業の主軸を移し、独自の道を歩み始めた。評価の違いは、ソニーが事業ポートフォリオの再編に成功したのに対し、パナソニックはいまだ途上にあること、あるいは実行力が足りないことにある。
B(ファンドマネジャー) パナソニックは経営の方向性に失敗したと思う。B2Bの部品事業を主体としたが、これでは、下請け会社に過ぎない。日立は、送電網や鉄道、ビルなどのソリューション事業を持っていたから、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)で効率化する「ルマーダ」と相乗効果があった。しかし、パナソニックが持っているのは主に部品だから、「ブルーヨンダー」でサプライチェーンを効率化しようとしてもシナジーは生まれない。
市場の声を聞いた日立
C(投信会社社長) パナソニックは市場ときちんと向き合わず、株主の声を聞いてこなかった。それが日立との大きな違いを生んでいる。日立は08年度に8000億円弱の赤字を出して、巨額増資を迫られた。その時、当時の川村隆社長は汗をかいて世界中の投資家を回り、コーポレートガバナンスを強化した。最初の取締役会では英企業社長である社外取締役に「東大や東工大を出た優秀な人材が集まっているのに、なぜ、営業利益率が5%しか出ないんだ」と言われた。それまで、自分たちも薄々感じていたことを、社外取締役にガツンと指摘されたことで、経営に緊張感が出て、もうからないビジネスからどんどん撤退していった。それに比べると、パナソニックは組織文化もあるのか、とにかく動きが遅い。
D(業界紙記者) パナソニックのグループ再編について疑問に思うのは、要は、何かシナジーがあると思って事業部をくっつけてみたが、結局、シナジーがなかったから分離するということを繰り返していることだ。例えば、車載部門は一度、電子部品と一緒になったが、何のメリットもなかったので、再び分離した。
パナソニックコネクト社には、SCM(サプライチェーン管理)ソフトを手掛けるブルーヨンダーが入っているが、ここには電子回路基板に部品を取り付ける実装機部門もある。実装機は元々、独立の子会社だった。経営陣はブルーヨンダーのソフトと…
残り2091文字(全文3291文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める