週刊エコノミスト Online 日立・ソニー・パナソニック復権の道のり
ソニーが高精細MRゴーグル製品化 独シーメンスとの協業で 村田晋一郎・編集部
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ソニーが産業向けのMR(複合現実)ゴーグルを開発した。今後はエンタメ分野でも活用が期待される。
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ソニーの将来の成長を支える事業の一つとして期待されているのが、現実と仮想空間が融合するXR(クロスリアリティー)の分野だ。XRは、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)/MR(複合現実)がある。ソニーでXRというと、既にゲーム用のVR端末として、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが2016年に「PlayStation VR」の発売を開始している。このコンシューマー向けゲームの展開とは全く別に、ソニーは、MRを想定した3Dコンテンツクリエーター向けのXR事業を立ち上げている。
具体的な展開として、今年1月の世界最大の技術見本市CES2024で独シーメンスとの協業によるXRヘッドマウントディスプレー(HMD)を発表した。この協業はシーメンス側からもちかけられたもので、2021年ごろから始まったという。協業はソニーがハードウエア、シーメンスがソフトウエアを担当する役割分担となっている。もともとシーメンス側で、産業用メタバース(仮想空間)を打ち出し、設計製造プロセスを変革する取り組みを進めていた。そして、CAD(コンピューターによる設計支援)を仮想空間で使いたいという要望があり、ソニーグループの技術を活用することで、実現しようとした。ソニーはXRHMDを開発し、シーメンスは3D CADソフトウエア「NX」をXRHMDに対応させるため、ソフトウエアを開発した。
まずはシーメンスのCADを使用しているメカニカルエンジニアを最初のターゲットに想定し、B2Bのビジネスとなる。メカニカルエンジニアが作る製品は、小さいものはカメラから、大きいものは自動車や船を想定している。XRHMDにより、自動車や船では、仮想空間で実物の大きさを確認しながら作業ができる。
ソニー製有機ELを搭載
XRHMDは、ディスプレーにソニーセミコンダクタソリューションズ製の片眼4Kの1.3型マイクロ有機ELディスプレーを搭載している。従来のVR用ディスプレーが片眼2Kであるのに比べて、片眼4K、両眼で8Kの高精細な映像を実現したことで、仮想空間への没入体験を高めている。
また、コントローラーは指に装着するリング型コントローラーとポインティングコントローラーの2種類用意。例えば、利き手でポインティングコントローラーを持ち、反対側の手の指にリング型コントローラーを装着する。リング型コントローラーは仮想空間のオブジェクトを直感的に操作でき、また指にはめたまま目の前の現実空間のパソコン(PC)のキーボードを操作できるため、PCを併用した作業が可能となっている。ポインティングコントローラーは、空間点指定に最適な形状と効率的なボタン配置を追求し、空間内で精密な作業を可能にする。
さらにヘッドセットには合計六つのセンサーが付いており、うち二つは前方を撮影するカメラとなっている。これによって、現実の空間と仮想空間を融合する。また、ヘッドセットはフリップアップ(…
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