インバウンドを地方創生の切り札に持続可能な観光振興を促す 新井直樹
有料記事
インバウンドは地方創生の切り札と期待されるが、都市部と地方の格差は広がっている。持続可能な観光振興が求められる。
>>特集「インバウンド新次元」はこちら
2024年のインバウンド(訪日旅行客)は、新型コロナウイルス禍前を上回り過去最高に拡大する見込みだが、インバウンドの過密によるオーバーツーリズムが再燃するとともに、過疎による地域格差の問題も拡大している。こうした中、政府は、観光、特に経済効果の高いインバウンド観光は地方創生の切り札、成長戦略の柱として地方誘致を強化している。本稿では、インバウンドは地方創生の切り札となるのかについて検証する。
大都市への集中加速
図の通り、コロナ前後(19年・23年)の3大都市圏・地方部別の外国人宿泊者数の割合を比較すると3大都市圏は約6割から約7割に増加、地方部は約4割から約3割に減少し、コロナ後、大都市と地方でインバウンドの地域格差が拡大している。
次に、表1では23年の都道府県別外国人宿泊者数の上位下位3位の都道府県、全国比、19年比を示したが、インバウンドの滞在は、東京、大阪、京都の上位3位で63.3%を占め、集中、偏在している。中でも東京都は、19年の2935万人、25.4%から23年の4364万人、37.1%へと19年比で1.5倍に急増し、地方部の19年の3358万人、28.5%を上回り、コロナ後、インバウンドの東京一極集中が加速している。
インバウンドの大都市、東京への集中、偏在が、コロナ後に進展した要因は、成田、羽田空港に比べ地方空港の国際線回復が遅れた上に航空燃料や地上業務員の不足によって国際線就航が進まないためである。政府は30年に現在の倍の訪日外国人6000万人の目標に合わせ成田空港の滑走路新設、羽田、関西空港の国際線増便を進めるが、このままではインバウンドの東京、関西圏への集中が加速し、過密地域のオーバーツーリズムとともに、過疎地域との地域格差の問題がさらに悪化するだろう。
一方で、地方部でも23年に初の国際線(台湾)を高知空港に就航させた高知県の外国人宿泊者数は19年比で45.9%増と約1.5倍に急増したほか、韓国を中心に国際線の回復が早かった福岡空港を有する福岡県の同数は、19年比で18.2%増加した。コロナ前の10年代においても地元空港に国際線を新規就航させた青森、岡山、香川、佐賀県などの外国人宿泊者数は急増した。
こうした中、政府は、これまでの成田、羽田、関西空港を中心としたインバウンドの受け入れ拡大政策から、地方空港を活用したインバウンドの地方分散政策へと大きく転換し、地域格差やオーバーツーリズム…
残り1254文字(全文2354文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める