インバウンド需要の高まりが期待される万博 懸念は人手不足 具志堅浩二
有料記事
大阪・関西万博でインバウンド需要の高まりが期待されるが、水を差しかねない懸念点も浮かび上がっている。
>>特集「インバウンド新次元」はこちら
大阪の繁華街を歩くと、インバウンド(訪日旅行客)の回復ぶりをしばしば体感する。先日、大阪・関西万博関連の取材で訪れた大阪の繁華街・ミナミでは、道頓堀川に架かる戎橋の上で、インバウンドと思しき人々が大きな電飾看板をバックに写真を撮影したり、橋の欄干にもたれて会話したりする光景が数多く見られた。
実際、大阪観光局によると、2024年1~8月の来阪外国人数は19年同期比で9%増に。24年通期は19年の1231万人を上回る約1400万人、25年は約1500万人に達するとの見通しも示す。
2025年日本国際博覧会協会は、期間中の来場者数約2820万人のうち、インバウンドが約350万人を占めると想定。仮に、この数字を大阪観光局が予想する来阪インバウンド数(1500万人)で割ると約23%、5人に1人強が来場する勘定だ。
約350万人の達成に向けて、博覧会協会は海外でのPRを推進。公式キャラクターのミャクミャクも派遣して万博のアピールに努める。国際観光振興機構(日本政府観光局)は同協会と連携して、万博の入場を組み込んだツアーづくりが各国で進むよう、海外の旅行会社に働きかけている。
万博の経済波及効果について、経済産業省は総額約2.9兆円になると試算。これを受けて大阪府・大阪市は、大阪府での経済波及効果が約1.6兆円になると推計した。シンクタンクのアジア太平洋研究所(APIR、大阪市北区)は、経済波及効果が約2.7兆円、大阪府に限れば約2.1兆円と試算。また、宿泊や飲食など来場者の消費支出は、国内客が6927億円、インバウンドが1986億円と予測する。なお同研究所は、周辺府県でも万博のテーマに関連したイベントを実施する「拡張万博」が活発化すれば、経済波及効果はさらに拡大すると見る。
ホテル開業相次ぐ
大阪府内では、万博およびそれ以降を見据えて、インバウンドの受け入れ体制整備が進む。
大阪市内では24年、大型ホテルの開業が相次いだ。7月にはカンデオホテルズ大阪ザ・タワー(大阪市北区)と大阪ステーションホテル オートグラフコレクション(同)が、8月にはフォーシーズンズホテル大阪(同)が、9月にはキャノピーbyヒルトン大阪梅田(同)がそれぞれ開業。万博が開幕する来春に向けても、ウォルドーフ・アストリア大阪(同)、ホテル阪急グランレスパイア大阪(同)、パティーナ大阪(大阪市中央区)が開業を予定する。
飲食業界におけるインバウンドへの対応力向上のため、…
残り1541文字(全文2641文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める