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経済・企業 書評

トーハンが超ミニ書店の開業支援始める 永江朗

 出版取次のトーハンが10月、小型書店の開業を支援するサービス「HONYAL(ホンヤル)」を開始した。今までなら取引の対象とならなかったような売り上げ見込みの小さな書店を想定している。昨今増えている独立系書店や飲食店、さらには公共施設、一般企業との連携も視野に入れているという。

 興味深いのは取引条件である。通常、書店を開業するとなると、連帯保証人や信認金(保証金)が求められる。信認金は予測される売り上げの1カ月分が相場だといわれる。そのほか、開業時の初期在庫の費用も必要。もちろん店舗の家賃や保証金、内装費など取次以外に支払う費用もあるので、書店開業にはかなりお金がかかり、個人が簡単に始められるものではない。

 ホンヤルではこのハードルを下げた。連帯保証人も信認金も原則不要。初期在庫費用は開業時一括払いではなく分割払いも可(要相談)。書店の取り分となるマージン率は一般的な書店と同程度というから、定価の2割強というところだろうか。

 これだけ見るといいことずくめのように感じるが、そう甘くはない。まず、扱うのは書籍のみで雑誌はない。配送は週に1回だけ。そして、重要なのは、書籍も注文品のみで取次からの見はからい配本はなく、返品は仕入れ額の15%までと枠が決まっていることだ。ちなみに、出版業界全体での書籍返品率は33.4%である(2023年、全国出版協会・出版科学研究所)。

 ホンヤルで想定している書店の月商規模は30万~100万円とのこと。書店の粗利益は6万~20万円ぐらいか。この粗利益の額では書店専業では難しそうだが、飲食など他に本業のある店舗や施設なら可能だろう。つまり、「街の書店の危機」が叫ばれ、「子どもが小遣いを握ってコミックの新刊を買いに行く本屋がなくなる」と言われる時に想定されている書店とは違う。

 書籍だけでなく雑誌も扱い、新刊が毎日入ってくる「普通の本屋」を開くのに、連帯保証人も信認金もなしでというわけにはいかないのだろうか。そのハードルを越えられれば、書店を始めようという意欲ある人はもっと現れると思うのだが。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2024年11月26日号掲載

永江朗の出版業界事情 トーハンが小型書店を開業支援

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