インターナショナル・シーウェイズ 石油タンカーの運航大手 清水憲人
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International Seaways, Inc. 業績は好調 堅調な需要/133
インターナショナル・シーウェイズは、大手タンカー事業者のオーバーシーズ・シップホールディング・グループ(OSG)から2016年11月末にスピンオフされた国際海運会社だ。
1920年に制定された米国商船法のセクション27は、造船や海運分野における国内の産業・雇用維持や、安全保障上の懸念に対処するものであるが、国際事業も手掛けるOSGのような大手海運会社にとっては、事業の制約となっていた。
そこで国内事業と国際事業を分離し、それぞれの市場に専念させることでより企業価値を高めようとした。インターナショナル・シーウェイズは21年に同業のダイヤモンドSシッピング社と合併し、事業規模を拡大した。
24年9月時点で、インターナショナル・シーウェイズが運航する船舶は原油を運ぶタンカー30隻とガソリンや灯油など石油製品を運ぶタンカー52隻の計82隻。原油タンカーの内訳は、VLCC(Very Large Crude Carrier)と呼ばれる20万~30万トン級の大型タンカーが13隻、VLCCよりやや小さくスエズ運河を通行可能な「スエズマックス」と呼ばれるものが13隻、中型で水深の浅い港にも入ることができる「アフラマックス」が4隻だ。石油製品タンカーの内訳は、長距離・大量輸送に利用される「LR2(Long Range2)」と呼ばれる大型タンカーが1隻、LR2よりも少し小型の長距離輸送タンカー「LR1(Long Range1)」が13隻、短中距離の輸送に用いられる中型の「MR(Middle Range)」が52隻となっている。原油と石油製品に特化して多様なタンカーを運航しているのが同社の特長だ。
石油が中心
原油・石油製品というと、温室効果ガスの代表格であり、温暖化対策が進むなかでタンカー需要も減少していくように思えるが、同社の業績・株価はここのところ好調を維持している。17年から23年にかけて、売上高は3.7倍に増加。株価も値上がりし、株式時価総額は20億6019万ドル(3193億円、11月18日時点)となっている。その理由を見ていこう。
温暖化対策で需給逼迫
タンカー事業はさまざまな外部要因によって影響を受ける。まず、原油と石油製品は、人々の経済活動を支えるエネルギーであり、世界経済の状況により需要が変化する。20年から21年にかけて、世界の経済活動に大打撃を与えた新型コロナウイルス禍は、エネルギー需要を減らし、原油と製品タンカー需要を減少させた。それに伴う運賃と稼働率の低下で、タンカー業界も一…
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週刊エコノミスト
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