桜島の最新研究 マグマ上昇から猶予なく大噴火/204
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鹿児島県の桜島は日本有数の活火山で、15世紀以降に3回(1471年、1779年、1914年)、火山爆発指数(VEI)4の大規模な爆発的噴火を起こしている。東北大学の研究グループが今年9月に発表した過去の桜島噴火の研究結果によれば、マグマが上昇を始めてから噴火に至るまでの時間の猶予があまりないことが分かった。こうした研究を今後の防災対策に生かす必要がある。
桜島の1914年1月の大噴火は「大正噴火」と呼ばれ、噴煙が1万8000メートルまで上昇して、大量の軽石や火山灰がふもとに降り積もった。さらに、南東へ溶岩が流れ出して桜島と大隅半島が地続きになり、マグマの動きに伴う大地震により58人が亡くなった。大正噴火で放出された火山灰や溶岩の量は30億トンで、桜島で日常的に起きている噴火の約10万回分に相当する20世紀最大の噴火だった。
地殻変動の観測から、桜島南岳の5キロメートル下のマグマだまりには、鹿児島湾中央の深さ10キロメートルにある姶良(あいら)カルデラの主マグマだまりから、年間1000万立方メートルずつマグマが供給されている。それから110年が経過した現在、大正噴火で出たマグマ量の9割がすでに蓄積されていると推定され、2020年代に満杯になることが懸念されている(本連載の第52回を参照)。
桜島は大正噴火後もたびたび噴火を繰り返し、1950年ごろには昭和火口から南岳山頂火口に活動の中心が移ったが、00年代に入ってから再び昭和火口が活発化している。ちなみに、22年7月には南岳山頂火口から2.5キロメートルまで噴石が飛び、噴火警戒レベルが初めて最高の「5」に引き上げられた(本連載の第112回を参照)。
半日~数日で地表に
15世紀以降に起きた3回の噴火では、噴火前に姶良カルデラ下の「主マグマだまり」(深さ10キロメートル)から浅部(深さ1~3キロメートル)にマグマが移動していたこ…
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週刊エコノミスト
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