マーケット予想 円売り優勢で再び1ドル=160円視野に 唐鎌大輔
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2025年の円相場を需給と金利に分けて考えてみたい。25年の日本の経常収支から得られる「実需の円売り」のイメージは22年や23年に比べれば改善するものの、円売り超過という事実自体は揺るがないだろう。
具体的に見ると、原油価格や円安のピークアウトを背景として、貿易赤字はおそらく縮小が期待できるが、サービス収支赤字の源泉であるデジタル赤字は引き続き拡大しそうであり、旅行収支黒字の拡大をもってしても、相殺できない構図が続きそうだ。
8兆円に迫るデジタル赤字
ちなみに、これまで拡大が当然視されてきた旅行収支黒字が前年比で減少するという展開も警戒したい。人手不足や円安のピークアウト、オーバーツーリズムへの警戒なども踏まえると、旅行収支黒字のピークアウトはいつ起きても不思議ではない。
一方で、25年のデジタル赤字は8兆円に肉薄する可能性もある。その結果、貿易サービス収支全体では思うように赤字縮小が進まないだろう。
25年の経常収支全体では40兆円近くに及ぶ黒字の可能性があるものの、日本企業が抱く海外再投資への意欲は依然強いはずだ。経常黒字を実際に日本へ回帰するだろうキャッシュフローベースで見れば1兆~2兆円の黒字と、おおむね均衡すると予想する。
なお、経常収支から得られる需給イメージは均衡するとしても、新NISA(少額投資非課税制度)に呼応した「家計の円売り」は健在だろう。24年並みの勢い(10兆円以上)が続くのかどうかは別としても、それに近いイメージは維持されるはずだ。やはり円の需給環境は円売り優勢の状態となる公算が大きい。
こうした需給環境に加え、内外の金利差動向も円安を後押ししそうだ。おそらく25年で最も注目される争点が、米連邦準備制度理事会(FRB)の「利下げの終わり」だ。そもそも24年9月時点のドットチャートで「利下げは26年で終わり」という絵が示されていた。このシナリオに沿うだけでも25年は「26年で利下げは終わり」という意見が出やすい年だということが分かる。
しかし、第2次トランプ政権の発足で、インフレ誘発的なポリシーミックス…
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週刊エコノミスト
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