相続マンション評価額引き上げで目減りした節税効果の代替案とは 大塚政仁
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マンションを買えば相続税評価額を大きく圧縮できたのは過去の話。昨年1月からは市場価格の6割の水準に引き上げられた。
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相続したマンションの評価方法が変わって1年が経過した。昨年1月以降の相続から新税制が適用されているのだ。実務上、どんな変化があったのか。
まず新・旧税制の違いについて説明しておこう。税制改正の主眼は、相続税の計算に使うマンションの評価額を引き上げることだった。国税庁が改正前に調べたところ、全国で2018年に取引されたマンションの市場価格は相続税評価額の平均2.34倍。割り戻すと、1億円で買ったマンションの評価額は約4274万円だったことになる。マンションを買うだけで資産評価額が43%に下がり、相続税額を減らす対策になっていたというわけだ。
市場価格の6割へ補正
一方、戸建て住宅の市場価格は評価額の1.66倍。1億円で買った戸建ての評価額は約6024万円、資産評価額は60%に下がったことになる。国税庁はこれを根拠にマンションの評価額を戸建てと同等の「市場価格の6割」に引き上げる算式を考案した(表)。評価額に一定の「評価乖離(かいり)率」を加えて計算するもので、当該マンションの総階数、当該住戸の所在階、築年数、敷地持ち分狭小度を数値化した四つの変数で算出する。
実際はどうだったのか。高齢女性のAさんが16年に購入したマンション2棟について検討しよう。いずれも東京23区内でJR山手線の駅に近く、築年数が浅い物件で、購入額はそれぞれ8000万円台。Aさんが18年に亡くなった後、当時の税制に基づいて評価額を計算すると、物件Bは購入価格の29%、物件Cは同31%の2000万円台だった。国税庁が調べた18年全国平均の43%よりはるかに低い。東京23区のような不動産価格が高いエリアでは、マンションを購入することによる節税効果は非常に大き…
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週刊エコノミスト
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