日本の活断層/5 六甲・淡路島断層帯㊤ 30年前に発生した阪神・淡路大震災の震源/207
今年は阪神・淡路大震災の発生から30周年となる。1995年1月17日午前5時46分、淡路島北部の深さ16キロメートルを震源とするマグニチュード(M)7.3の地震が発生した。この地震によって神戸市は最大震度7の揺れに襲われ、東北から九州にかけての広い範囲で揺れを観測した。
気象庁はこの地震を「1995年兵庫県南部地震」と命名し、さらに政府は災害名を「阪神・淡路大震災」と呼称することを閣議決定した。死者6434人、負傷者4万3792人、全壊住戸約10万5000棟、全焼約7000棟という、当時では戦後最大の地震被害となった直下型地震である。
地震を引き起こしたのは「六甲・淡路島断層帯」である。大きく2領域に分かれ、大阪府北西部から淡路島北部に位置する断層帯主部と、淡路島の洲本市から南あわじ市に位置する先山断層帯からなる。このうち、北東─南西方向に71キロメートル延びている断層帯主部では、右横ずれを主体とする逆断層成分を伴う運動を起こしてきた。
阪神・淡路大震災では、兵庫県西宮市から明石海峡にかけて全長30キロメートルにわたる断層が地下で活動し、甚大な被害を生じさせた。また、淡路島西岸の野島断層では、深部の断層活動が地表まで達して断層崖が出現した。
政府の地震調査研究推進本部は、六甲・淡路島断層帯主部の平均活動間隔について、六甲山地から淡路島東岸では900~2800年、淡路島西岸では1800~2500年とそれぞれ推定している。また、将来の活動に関しては、六甲山地南縁─淡路島東岸が活動した場合にM7.9程度の地震が発生し、5~6メートル程度の右横ずれ変位を生じる可能性があるとした。ちなみに、この区間は今後30年の間に地震が発生する確率がやや高いグループに入っている。
帯状に震度7記録
阪神・淡路大震災では、震央から遠く離れた地域で帯状に震度7を記録する驚くべき現象が起きた。六甲山地南方の神戸市須磨区から西宮市に至る幅1キロメートル、長さ20キロメートルの地域が帯状に震度7の強い揺れに襲われ、「震災の帯」と呼ばれた(地図中の「震度7の領域」)。一般に、直下型地震では地震を起こす「震源断層」の真上で強い揺れが起きるが、阪神・淡路大震災では震源断層の真上よりも、海寄り及び東寄りの地域で揺れが特異的に大きかったのである。
この地域の地質を見ると、六甲山地南の山麓(さんろく)では花崗(かこう)岩などの岩盤が薄くなり、上を軟弱な堆積(たいせき)層が覆う。ここで山沿いに伝わる地震波と平野の直下深部から伝わる地震波が重なり、揺れが増幅したと考えられている。具体的には、地下深部の硬い岩盤が埋もれた崖を通った地震波と、真下から直入した地震波が重なり合い、地震動が極めて大きくなった。
次回は、六甲・淡路島断層帯の中で長さ10キロメートルにわたって地表に断層崖が出現した野島断層について紹介しよう。
■人物略歴
かまた・ひろき
京都大学名誉教授・京都大学経営管理大学院客員教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。
週刊エコノミスト2025年1月28日号掲載
鎌田浩毅の役に立つ地学/207 日本の活断層/5 六甲・淡路島断層帯/上 震源の阪神・淡路大震災30年に