経済・企業 挑戦者2025

親の笑顔で子どもも笑顔に――幸脇啓子さん

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

grow & partners代表取締役 幸脇啓子

さいのわき・けいこ
 1978年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。NHK記者、文藝春秋編集者を経て、2017年に「grow & partners」設立。19年、一時保育の検索・予約システム「あすいく」開始。21年、LINEでのサービスをスタート。23年以降、体験型保育のメニューも増やしている。3児の母。

 保護者に自分の時間を。子どもには楽しい体験を。一時保育のマッチングや体験型保育で、いつでも子どもを預けられる社会を目指す。(聞き手=位川一郎・編集部)

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「あすいく」は、お母さん、お父さんが子どもを預けたいと思った時に、いろんな選択肢を提供するプラットホームです。保育施設での一時保育を予約することができますし、楽しい体験や学びを提供する「体験型保育」のメニューもあります。

 一時保育の予約は、「あすいく」の公式LINE(ライン)に住所や子どもの情報を登録すれば、空きのある施設の検索から決済まで1分で終了します。保育園を探して延々と電話したり、紙に記入して持っていく必要がありません。システムは24時間365日、動いているので、突然仕事が入ったりして前日の夜に予約する方も結構います。育休中のお母さんの利用も多いですし、ふだん保育園や幼稚園に通わせている方が週末に利用するパターンもあります。会員数は1万人を超えていて、今は月に400~500人ずつ増えています。利用可能な施設は1都3県を中心に90ぐらいで、これも着実に増えています。

「罪悪感」を消す保育

 サービスを始めてしばらくは、会員が増えたのに思ったほど使われませんでした。そこで、お母さん、お父さんにネットアンケートをしたら、自分が出かけたいから子どもを預けるのは悪い事だと感じてしまうとか、子どもを預けるのはかわいそうなのではといった回答が7割を超えたんです。

 こうした親の「罪悪感」を消すため、預けている間に子供が楽しめるようにと始めたのが、体験型保育です。私の子どもが電車好きで、東京駅に連れて行くと目をキラキラさせて新幹線を見ていたこともきっかけでした。駅には鉄道のスペシャリストがいます。保育士さんが来たらここで保育ができる、子どもにとっては最高の体験になると考えたんです。

東京メトロ有楽町駅での体験型保育「メトいく」=2024年12月1日(位川一郎撮影)
東京メトロ有楽町駅での体験型保育「メトいく」=2024年12月1日(位川一郎撮影)

 体験型保育はほぼ毎週末開催していて、4~6歳の利用が多いです。鉄道のプログラムの「駅いく」や「メトいく」では、駅員さんと一緒に駅や電車を見たり、回送列車に乗せてもらったりして、リアルな職業体験ができます。ほかにも昆虫と触れ合ったり、空港に行ったり、ショッピングセンターで店員さん体験をしたりというプログラムも行ってきました。これまで世の中になかったサービスだと思います。

 私自身は、文藝春秋で編集者をしていた2015年に第1子を産んではじめて、育児の大変さを実感しました。育休中に「子どもは預かるから」と母に言われ1人でカフェに行った時、「すごく自由だ」と感じ、どんなに子どもがかわいくても1人の時間は大事で、自分がリフレッシュした方が子どもに笑顔を向けられると気づいたんです。復職後に子どもを保育園に預けてそのありがたさを知り、保育園の空きを子どもを預けたい人とシェアできないかと考えたのが、「あすいく」の最初のアイデアでした。

 親が笑顔になれば子どもの笑顔が生まれます。自分の時間がほしい時、いつでも子どもを預けられる社会をつくりたい。一時保育のマッチングは全国展開が目標です。企業との協業も順調に増えているので、子どもが主役のプログラムがLINEを開いたら目移りするぐらいそろっているようにしたいですね。


企業概要

事業内容:一時保育の検索・予約サービス、体験型保育サービスの提供

本社所在地:東京都港区

設立:2017年12月

資本金:5694万6313円

従業員数:12人


週刊エコノミスト2025年1月14・21日合併号掲載

幸脇啓子 grow & partners代表取締役 親の笑顔で子どもも笑顔に

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