教養・歴史 ロングインタビュー情熱人

写真集『辛朝鮮』刊行――梁丞佑さん

「今までは自分のためだったが、『辛朝鮮』は初めてモデルの若者のために撮る感覚だった」 撮影=中村琢磨
「今までは自分のためだったが、『辛朝鮮』は初めてモデルの若者のために撮る感覚だった」 撮影=中村琢磨

梁丞佑 写真家/137

ヤン・スンウー 1966年、韓国井邑(チョンウプ)市生まれ。96年に来日し、日本写真芸術専門学校へ入学。2000年東京工芸大学芸術学部写真学科に入学。06年同大学院芸術学研究科メディアアート専攻写真メディア領域修了。00年、04年フォックス・タルボット賞第一席、06年新風舎・平間至写真賞大賞、16年に写真集『新宿迷子』(禅フォトギャラリー)を出版し、17年に外国人写真家として初めて第36回土門拳賞を受賞。24年9月、韓国で被写体となることを希望した若者を撮った写真集『辛朝鮮』(禅フォトギャラリー)を刊行。

 韓国から来日後、新宿・歌舞伎町に魅せられ、常人では撮影しえない数々の「日常」をカメラに収めてきた梁丞佑さん。苦悩を抱える韓国の若者を被写体に、新たな境地も切り開いている。(聞き手=大宮知信・ジャーナリスト)

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「新宿・歌舞伎町に行くと、路上で歌い、酒を飲み、空き缶も転がっている。『韓国と変わらない』と気が楽になった」

── 歌舞伎町を中心に東京・新宿のヤクザやテキ屋、ホームレスといった人々を撮り続け、外国人写真家として初受賞となった土門拳賞の受賞作品(2017年、第36回)『新宿迷子』(禅フォトギャラリー)にもなりました。なぜこの街に引かれたのですか。

梁 1996年に韓国から日本へ来た時、街がきれいでゴミのポイ捨てができないのが困った。何日もゴミをポケットに入れたまま持ち歩いたりしてね。その時、当時通っていた日本語学校の先生が「新宿は危ない街だから行かないで」と言うんです。逆に行きたくなっちゃって、行ってみると路上で歌は歌っているし酒は飲んでいるし、空き缶があちこちに転がっている。もう最高でしたよ。「韓国と変わらないじゃん」と、気が楽になって週末になると遊びに行くようになったんです。

── 歌舞伎町を縄張りとする裏…

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