経済・企業 学者が斬る・視点争点

「製造大国」転換へ正念場のインド 池田恵理

 インド経済の一段の発展のためにも、製造業の育成は急務だ。中小企業も含めた支援策の拡大が求められている。

中小企業含む補助・振興策拡充を

 1970~80年代以降、新自由主義経済が世界を席巻してから、先進国をはじめとして脱製造業が進む一方、東南アジアや中国が「世界の工場」として台頭した。他方で、近年、米国をはじめとして、世界的に産業政策への回帰が見られている。これは、従来の経済成長の重視に加え、コロナ禍や米中貿易戦争、また、地政学的な緊張と相まって、自国の産業を強化することがより安全保障、経済安全保障上の利益と結びついているためである。

 インドにとっての懸念事項は、「自立」(Self Sufficiency)である。歴史的に見ても、インドは独立前から国家開発計画として、国産化による自立を目指してきた。近年では、特にモディ首相が2014年に掲げた「Make in India, Make for World」やコロナ禍に対処するための経済政策としての「自立したインド(Atmanirbhar Bharat)」、世界的な脱中国のサプライチェーン移行の流れを受けて、広く考えが再認識され、インド国内でも産業政策に注目が集まるようになった。

PLIで16の戦略部門

 現在の目玉政策はPLI(Production Linked Incentives:生産連動型優遇策)である。PLIは、インド政府が指定した16の戦略的部門(表参照、拡大はこちら)において、日本などの外資を含む選ばれた企業が投資を拡大し、政府が設定した生産や雇用目標に到達した場合に、補助金が支給されるという政策である。WTO(世界貿易機関)規定の抵触への懸念から、輸出を明記していないことに、戦略的な政策であることも見て取れる。20年から段階的に実施されており、その成果が徐々に明らかになってきている。

 インド商工省は、24年6月時点で、…

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