申告漏れ遺産の大半は“へそくり” 名義が相続人でも原資が故人の収入なら課税対象 板倉京
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名義がいくら相続人でも、その原資が被相続人(亡くなった人)の財産なら、「名義預金」として相続税の課税対象になる。
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「人の日記を勝手に見ないでください! そんなの夫の財産と関係ないでしょ!」
ユミコさん(75)は声を荒らげた。2年前に夫を亡くし、相続税の納付を済ませてから1年半たった頃、税務署から連絡を受けた。税務職員が納税者の自宅や事務所を訪ねて申告内容を調べる「実地調査」をしたいというのだ。調査当日、ふと気づけば、台所に座り込んだ若い職員がユミコさんの家計簿兼日記を手にしていた。職員は「あ、すみません。家計簿のお金の流れを確認していました。日記にもお使いとは気が付きませんで……」と謝ったが、ユミコさんはショックと怒りでその場に崩れ落ちてしまった。
相続税に関する実地調査の際、税務職員は故人や相続人の財産に関連するあらゆる書類や物を確認しようとする。金庫はもちろん、引き出しや箱の中、押し入れの布団、仏壇だって調べる。故人や配偶者、子、孫の預金通帳、葬儀の列席者名簿や香典袋、郵便物など、金目のものは全て確認し、お金の流れが分かる家計簿も例外ではない。税務職員が狙うのは、相続人が相続税の申告書に記載しなかった隠し財産だ。
実地調査を受けると、申告内容に非違(税法違反)を指摘される可能性はかなり高い。国税庁が昨年12月に公表した相続税に関する税務調査の結果によると、2023事務年度(23年7月〜24年6月)の実地調査8556件のうち、実に84・2%の7200件で申告漏れなどの非違があった(図)。
申告漏れには、名義が相続人の預金や「へそくり」が多い。国税庁ウェブサイトの「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」にはこんな説明が載る。「名義にかかわらず、被相続人(故人)が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるも…
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